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闇に魅入られた科学者たち
科学者の好奇心は、それが優秀な頭脳と結びつけばつくほど、制御不能なものとなって人々の眼前におぞましい姿を現す。ある者は湧き出る探究心の赴くままに、ある者は名誉欲に憑かれ、別のある者は国家権力とともに、暴走する。倫理にもとる戦慄の人体実験の歴史を紐解き、科学の闇に迫った驚愕のノンフィクション!
2018年は、メアリー・シェリーが著したゴシック小説の傑作『フランケンシュタイン』が出版されてちょうど200年目に当たる。「フランケンシュタインの誘惑」という番組を構想したのは、ちょうどSTAP細胞が存在するか否かを巡って日本中が騒然となっていた頃だった。今日、我々は科学の恩恵なしには1日も生きていけない。その一方で科学が巻き起こす災禍もまた、ますます大きくなっている。科学とはいったい何か? 科学者とはいったいどんな人間なのか? 加速度的に進む科学技術と、我々はどう向き合ってゆけば良いのか? 考える手がかりとして求めたのが、科学史の輝かしい成果の陰に隠れ、歴史の闇に埋もれたさまざまな事件だった。 番組制作者としての我々の願いは、過去の事件の検証にとどまらず、同時にそれが現代の科学とどのように関わっているのかを浮き彫りにし、「いま」の問題として考えるきっかけとしてもらうことにある。そのため海外の識者や日本の科学者たちのコメントを交えて構成した。番組では時間的制約で割愛せざるを得なかったインタビューや取材資料も改めて見直し、本書に盛り込んだ。放送後に新しい動きのあったものについては、可能な限り最新情報を反映させた。巻末には本書で取り扱っている事件に関連した年表を加え、本文中にも登場する池内了さんが論考を書き下ろしてくださった。歯ごたえのある1冊になったと信じている。