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道徳教育は「いじめ」をなくせるのか
平成30年度から小学校で新しく教科となった「特別の教科 道徳」。いじめをなくすための教科化のはずだが、はたして本当にいじめをなくすことはできるだろうか。「特別の教科 道徳」の成立過程の分析からその意義を問い直し、「考え、議論する道徳」を有効に機能させ、いじめをなくすためにどうすればいいのかを考察。いじめ防止の授業設計に向けた、役立つ取り組みを紹介する。
教室内のキャラクターとして期待され、容認される発言ばかりを出し合う授業では、空気を読むことを覚えるだけで、せいぜい組織内の論理に従うことしか学べないだろう。その手の学習は、道徳が教科化されるずっと前から、学級や部活動における「隠れたカリキュラム」として多くの児童生徒が行ってきたものである。だからこそ、組織内の論理に従って法令違反をするような事態が、学校や教育委員会、大企業等で起こってしまう。道徳を教科化したとしても、空気を読む学習を強化してしまうだけでしかないのであれば、百害あって一利なしだ。教室内で付与されたキャラクターを甘んじて演じることを越えてこそ、「考え、議論する道徳」と言えるのである。