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日本断層論

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NHK出版新書 347

日本断層論 社会の矛盾を生きるために

[著] 森崎和江 [著] 中島岳志

発売日 2011年04月09日

新書

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定価 1,078円(本体980円)

送料 110円

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商品紹介

性、植民地、炭鉱── 昭和の闇を生き抜いた精神の軌跡!

植民地という原罪、中央の論理で容赦なく切り捨てられる坑夫たち、消費され踏みにじられる女性……一枚岩とされた戦後日本に走る数々の断層に鋭く注目し、それらを克服しようとしなやかな思索を重ねてきた森崎和江。末端労働者や女性たちの苦悩、谷川雁や埴谷雄高など戦後知識人の素顔を、孫世代の論客が聞き出していく。格差社会と言われる今、なおも存在する様々な断層に苦しむ人たちに向けて。

森崎和江は、日本の植民地問題や炭鉱労働をめぐる問題などについて、鋭い思索を重ねてきた作家・詩人である。植民地時代の朝鮮で生まれた彼女は、戦後、苦悩を抱えることになった朝鮮の大地に育てられたにもかかわらず、戦後自分は九州に引き揚げ、「日本人」として、のうのうと日本を郷土としていること。さらに、同様の苦悩から自殺した同じ植民地育ちの実弟を、救ってあげられなかったこと。彼女にとってこれは「原罪」となり、それを絶えず意識しているがゆえ、この国に走る「断層」にきわめて敏感になった。本書では、孫世代にあたる中島岳志が、森崎の歩みをインタビューし、戦後日本の断層や人間の暗部を浮き彫りにしていく。

では、森崎が見つめた「断層」とは何だったのか。一つは、炭鉱の合理化が進む中で見えてきた、中央と地方、大手炭鉱と中小、正規と非正規雇用などの断層である。全国から九州に集まってきた炭鉱労働者は、中央の資本の論理で、中小の非正規ほど容赦なく切り捨てられる。もう一つは、左翼知識人と民衆との断層。森崎は谷川雁と雑誌「サークル村」を創刊し、抵抗の場を作ろうとするが、そこに参加したのは労働者内のエリートだけ。谷川など知識人も抽象的なお題目を唱えるだけだった。さらには、女性と男性の間の断層。森崎は運動仲間の女性が同志の男性に強姦され殺されたことに衝撃を受け、労働運動のみならずあらゆる場で置き去りにされ、ふみにじられる、女という「性」の問題を、皮膚感覚で受け止めるようになった。

戦後日本が決して一枚岩ではないという感覚によって、その後森崎は日本海沿いに北上して習俗をたどり、北海道の先住民族と出会い、「日本」という名の下に気安く統合できない精神の輝きがあることを知る。また、戦前、売春婦として海外に売られた日本の女たちの記録を調査し、彼女たちに、朝鮮や炭鉱の女性たちにも通じるしなやかな感性を認めることになる。

森崎の80年の人生は、「断層」を通じて「日本とは何か、日本人とは誰か」という問いに迫った歴史と言えるだろう。本書では時系列に即して、植民地の人たちや末端労働者、女性たちの苦しみ、谷川や上野英信、埴谷雄高など戦後知識人の素顔と限界などを中島が巧みに聞き出していく。

「性や民族を超えて「異質の他者」を受け止めること」の重要さを孫世代にぜひ伝えたいと森崎は言う。格差社会と言われる現在、この国にはなおも有形無形のさまざまな「断層」が存在している。断層に苦しむ多くの「孫たち」に向けて、孫世代の中島が彼女の精神の歩みと輝きを再構成するまたとない一冊。
(NHK出版 大場旦)

目次

第1章 「前と後ろからピストルでねらわれている」――植民地という原罪
第2章 「私には顔がなかった」――「日本」への違和
第3章 「無名にかえりたい」――サークル村から闘争へ
第4章 「侵略と連帯は紙一重」――朝鮮との再会
第5章 「ほんとうの日本に出会わなきゃ」――土着、辺境、いのち

商品情報

発売日
2011年04月09日
価格
定価:1,078円(本体980円)
判型
新書判
ページ数
272ページ
商品コード
0088347
Cコード
C0236(社会)
ISBN
978-4-14-088347-1