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Vol.1

今月の「器」=
北欧の小さなジャグ

選んだひと
城 素穂

じょう・もとほ=スタイリスト。ベルギーで食ともてなしを学び、雑誌や書籍で活躍する。

その器が食卓にあるだけでいい気分になれるという、特別な存在感を持った器があります。城さんにとって、今回ご紹介する小さなジャグもそんな器の一つ。古い北欧デザインの復刻版ですが、実家で愛用されていたという思い出の器です。ティータイムにミルクを入れたり、ソースやドレッシング、すき焼きの割り下などを入れても。持ちやすくて水のきれがよく、機能美を感じさせる器です。

この小さなジャグは、かつてロイヤルコペンハーゲン社のモダンラインとして多くの人に愛されてきたシリーズの中のアイテムで、ケーラー社が復刻したものです。

デザイナーのウワスラ・ミュンヒ・ペーターセンは、デンマークを代表する陶芸家の一人。ウワスラとはラテン語で〝小さなメス熊〟という意味があり、彼女の作品にはかわいい熊のロゴがプリントされています。

「実家にいたとき、ロイヤルコペンハーゲン社時代のこのジャグを母が愛用していました。色は白でしたが、サイズは同じ。お茶の時間には母や姉と一緒に紅茶を飲むことが多く、全員たっぷりミルクを入れるミルクティー派。だからこのジャグは、ミルクピッチャーとして欠かせなかったのです」と懐かしそうに話す城さん。

材質は耐水性に優れたストーンウェア。陶器と磁器の中間のような性質を持ち、陶器の持つ温かみと磁器の丈夫さを兼ね備えています。発祥は14世紀ごろのドイツのライン地方。
17世紀にはイギリスでも焼かれるようになり、その後、大流行しました。復刻版のこのジャグはポルトガル製。鮮やかなコバルトブルーは職人が一つ一つ手作業で色づけしているため、色味や質感に微妙な違いがありますが、それも味わいの一つです。

「ペンギンのような愛きょうのある形ですが、決してかわいさを狙っているわけではなく、そぎ落とされたシンプルな機能美なのです。くびれの部分は手になじんで持ちやすく、鋭いくちばしのような部分は液体を注ぎやすく、水のきれも抜群にいいですね。一見洋風なコバルトブルーは、不思議と和食器との相性もいいのです」

カトラリーやペーパーナプキンを入れて食卓に

城さんは実家のときと同じようにティータイムにミルクピッチャーとして使うほか、さまざまな使い方をしています。

「朝、シリアルを食べるときは直前にミルクをかけないとパリパリの食感が楽しめないので、このジャグにミルクをたっぷり入れて添えます。サラダのドレッシングやフライのタルタルソース、デザートのラズベリーソース入れなどにも。ちょっとしたデキャンタがわりに、赤ワインを入れることもあります。また、和食にも使えるので、すき焼きの割り下を入れたり、めんつゆを入れて具をのせた麺に添えることもあります」

キッチンに置いてハーブを入れておいたり、フラワーベースのように使うこともあるそう。
「ふだんのお手入れはとてもラク。底まで手やスポンジが入るので洗いやすいし、注ぎ口が筒状ではなく開いているので、きちんと洗えて衛生的ですね」

撮影・竹内章雄/構成&文・海出正子

今回紹介した商品

北欧の小さなジャグ

サイズ(約)
口径7.5cm(注ぎ口を含むと11cm)
・高さ10.5cm・底径6cm
容量(約)
280㎖
価格
5,500 円(本体5,000 円)
取り扱い
スキャンデックス

同商品はこちらに掲載されています。

「きょうの料理ビギナーズ」
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