じょう・もとほ=スタイリスト。ベルギーで食ともてなしを学び、雑誌や書籍で活躍する。
買い物の回数をできるだけ減らす生活になってから、野菜の鮮度を保つのに苦労していた城さん。あるとき、自然食品店で見かけた保存袋は厚くてしっかりしたつくりで、角が丸くなっていました。「これは丈夫で絶対洗いやすいはず! と思ってすぐに買ったんです。使ってみたら想像以上の保存力で、特に葉野菜は効果が絶大!買ってきてすぐ洗って水けをきり、ペーパータオルに包んでこの保存袋に入れておくと、2週間くらいは平気。いつ買ったか忘れてしまうほどです(笑)。傷みやすいバナナも日もちがいいですね。野菜をダメにして捨てることがないので、食品ロスも減らせます」
これはプラスチックの材料に独自の技術“エンバランス加工”を施し、鮮度保持、発酵促進、栄養素保持に特化した保存袋。食品をより生き生きさせて、栄養分を保つ働きがあります。表面加工などはしていないので、使っているうちにコーティング剤の成分がはがれたり、溶け出したりすることもなくて安心。洗って繰り返し使えるので、むだもありません。
「サラダの素材の野菜だけでなく、根菜、薬味、きのこ、フルーツ、パン、チーズなど、ほとんどの食品の鮮度を保ってくれます」
また、城さんは以前働いていたベルギーのレストランで、サラダに関して目からウロコの体験をしました。料理人が大きなボウルで葉野菜とドレッシングを、手でホワホワッとあえていたのです。
「それまでサラダのつくり方なんて意識したことがなく、ただ野菜の上にドレッシングを“かけて”いただけでした。でもちゃんと“あえる”とドレッシングがよくからまって、絶妙な塩加減のおいしさになるんですね」
以来、城さんはこれを見習って、「手の延長のような感覚で使える」柄の短いサーバーでサラダをあえています。そのサーバーは南仏の市場で買ったものだったので、今回ご紹介するのは木工家の須田二郎さんに意図を伝えて特注したもの。須田さんはグリーンウッドターニングという生木を使う手法で、さまざまなものを制作しています。須田さんにサーバーについてお話を伺いました。
「2本のサーバーのうち、フォーク型のほうはペン先のデザインで、ヨーロッパに多いモチーフですね。素材は桜の木。生木は乾燥するとゆがみが出やすく、木目も均一ではないので、どの部分をどう削り出すかが難しいところ。木をむだにしないようにしながら、ゆがみが最小になるように考えます。残った生木は小さいスプーンやバターナイフなどにして、最後まで木を使いきるようにしています」
撮影・竹内章雄/構成&文・海出正子