じょう・もとほ=スタイリスト。ベルギーで食ともてなしを学び、雑誌や書籍で活躍する。
「さらし」と聞いて、何をイメージしますか? おばあちゃんが台所で使っていたとか、見たことがないなど……。
サステナブル(持続可能)な暮らしに注目が集まる今、使い捨てではない布のさらしが見直されています。
城さんが見つけた商品はペーパータオルのように1枚ずつサッと切れるタイプで、専用の木製スタンドもおしゃれ。
繰り返し使えるさらしは、塩もみきゅうりを絞る、だしをこす、器や食卓を拭くなど、いろんな用途に幅広く使えます。
城さんが記憶する「さらし」は、おばあさまが料理をしている風景の中にありました。
「祖母はおせちをつくるとき、鍋いっぱいのだしをこしたり、ゆがいた食用菊を絞ったり、日の出みかん用のみかんの実をギューッと搾るのにさらしを使っていました。私も料理をするようになって、さらしを使ってみたいなと思ったけれど、そもそもどこで買えるのかもわからなくて、それっきりになっていました」
ところが意外なところで、さらしと出合ったのです。それは安産祈願でご祈祷していただいた腹帯用のさらし。
「ありがたくいただきましたが、おなかには巻かなかったので、布巾のように切って台所仕事に使ってみたんです(笑)。豆腐の水きりを試してみたら、ペーパータオルよりよく水がきれて、ああ、やっぱりさらしはいいなあと実感しました。そのあと見つけたのが、このさらしロールです。このよさはなんといっても、ミシン目が入っていて、サッと1枚ずつ切れるアイデア。腹帯用の長いさらしのときは、切るのにはさみが必要だったし、四角く切るのも案外難しくて。でも、このさらしロールならミシン目に沿ってビリッと切れるので簡単です。無垢(むく)のオーク材でつくられた専用スタンドも、とてもスタイリッシュ! キッチンに置けば、手軽に毎日使えます」
さらしは綿100%の生地で、日本の伝統的な技術でつくられるものは「和さらし」と呼ばれています。吸水性に優れていて、きめ細かく、軽くて柔らかいのが特長です。
このさらしロールをつくっているのは、110年余りの歴史がある大阪府堺市の“武田晒(さらし)工場”。環境に配慮した独自の技術でつくる和さらしは、食材にも安心して使える高品質のものです。かつては台所仕事に欠かせなかった和さらしを、現代の暮らしに合ったスタイルで届けたいと、2020年にこの商品を開発しました。
「調理中にサッと切って使えるのは、本当に便利」と城さん。
「35㎝幅のサイズもとても使いやすく、さらしたたまねぎは1/4~1/2コ分、塩もみきゅうりは1本分を絞るのにぴったり。豆腐の水きりにもちょうどいいサイズです。洗った葉野菜をパリッとさせたいときは、さらし2枚分を長く切って包み、冷蔵庫に入れています」
お手入れも簡単で、塩もみきゅうりなどの色がついても、サッと水洗いすればかなり落とせます。しっかりした生地だけれど薄いので、乾くのが早いのもメリット。何枚かを繰り返し使い回せば、ゴミを減らすことになって、快適に台所仕事ができます。
撮影・竹内章雄/構成&文・海出正子