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対談

連続テレビ小説「とと姉ちゃん」
相楽 樹(小橋鞠子役)×杉咲 花(小橋美子役)
「小橋家の次女と三女の打ち明けトーク」

最終更新日 2016.8.1

取材・文=上村恭子
撮影=天日恵美子

小橋家の次女・鞠子と三女・美子は、姉・常子のことをどう思っているの?鞠子役の相楽樹さんと美子役の杉咲花さんが、常子への思いや撮影秘話などについて語ってくれました。

思いついたら始めちゃうとと姉の行動力に感謝!

相楽
見てくださっている方々に、小橋家の仲のよさが伝わっているみたいだから、本当にうれしいね。撮影に入る前、3姉妹とかか(母)役の木村多江さんの4人でごはんを食べに行ったし、みんな本当に仲がいいよね。
杉咲
その時間が私にとって、すごく大事でした。私は途中から撮影に入ったので、急に家族になれるか心配でした。
相楽
撮影に入る前から花と連絡し合っていたから、私たちは違和感がなかったよ。違う現場から食べ物の写真を送ったりしてくれて、それがすごくおいしそうだった。その頃、こっちはお弁当だったから(笑)。
杉咲
でも、ロケ先から送ってくれた浜松のうなぎの写真を見て、とってもうらやましかった!
相楽
これは「送らないと!」と思ったの(笑)。
杉咲
早く現場に行きたいと思っていたのに、撮影が始まったら、今までにない、新しい緊張を感じてしまって。
相楽
緊張していたかもしれないけど、大丈夫だったよ。
杉咲
撮影前から現場にお邪魔させてもらって、とと姉が「花が来るのを待っているからね」って言ってくれて心強かった。木村多江さんはお母さん役だけど、一緒になって遊んでくれるのでまるで4姉妹みたいだし。
相楽
そうね。今や4姉妹かも(笑)。初めはスタッフさんたちから「常ちゃん、鞠ちゃん、よっちゃん、君子さん」と呼ばれていたのが、いつのまにか私たちと同列に「君ちゃん」って呼ばれるようになって……かか、喜んでたね。
杉咲
うん、そうだったね。
相楽
「とと姉ちゃん」は、ヒロインの成長はもちろん、小橋家の絆も描いているので、家族みんなずっと一緒。だから、4人がいろいろなことをすぐに言える関係になっている気がする。
杉咲
一家を支えようと立ち回るとと姉の大変さは想像を絶するけど、鞠子と美子がいることで「孤独じゃない」って思ってもらえていたらうれしいです。
相楽
とと姉は自分を犠牲にして、妹たちにいろいろやらせてくれるから、本当に「とと(父)」そのものだよね。鞠子にとって特に感謝したいのは、進路に悩んでいたとき、とと姉がタイピストとして働いてくれたおかげで、大学に行かせてもらえたことかな。星野武蔵さんとの将来を諦めてまで、私たちを守ってくれた。そのときの鞠子には分からなかったけど、大人になってから振り返って、とっても感謝しているよ。
杉咲
私は、とと姉が苦労しながら一生懸命働いて稼いで、本当は自分の洋服を買うためにお金を貯めていたにもかかわらず、そのお金で鞠姉には新しい万年筆を、美子には新しいくしを買ってくれたエピソードがすごく好き。自分のことを後回しにして、家族のことを第一に考えるところがすてきだなあと思った。
相楽
とと姉の、思い立ったらすぐに行動に移せるところはうらやましいなあと思う。鞠子は考えてから行動しちゃうから。ちょっと私自身と似ているかな。
杉咲
とと姉が前向きだから家族は救われています。自分の悩みは抱え込むのに、私たちには「大丈夫だよ」って何とかしようとしてくれる。
相楽
うんうん。鞠子にとっては、美子もうらやましいんだ。鞠子がグッと抑えているとき、末っ子の美子は何でもパッと言えちゃうから。
杉咲
でも、鞠姉が美子みたいに言えないのは、誰よりも優しいから。それを言ったら相手を傷つけてしまうことをよく知っているから。それと、鞠姉の性格は、ちょっと抜けてるところを含めて、かかの遺伝だと思う(笑)。
相楽
そうそう。かかの遺伝! 鞠子は行動派の姉と要領のいい末っ子の板挟みなの。家訓を大事にするとと姉が「家族みんなでどこかへ行こう」とノリノリになっているとき、鞠子は「行きたくない」って言えなかったけど、美子は素直に反発したよね。
杉咲
とと姉が何かを思いついてそこに進もうとすると、もうそれにしか目も耳も向かなくなっちゃうから。

相楽
美子が反発する気持ち、分かる。鞠子も美子もお年頃だから、それは父親に反抗するのと同じだよね。それぞれの生活が充実しているから、「家族そろって」って面倒くさくもある。鞠子はどちらの気持ちも分かるから、美子をなだめながら収めようとしたけど、確かにちょっとうっとうしいところがとと姉にはある。時には、周りを巻き込んだあげく失敗に終わることもあるけど、そういう猪突猛進な家族への愛情の表し方がとと姉らしさ。どんなに暑苦しく思われようと、そのスタイルを貫いてほしい。
杉咲
私も同感! とと姉は星野さんとの結婚より家族の幸せを選んだけど、それを後悔するときが来るかもしれない。でも、心に決めたからにはとと姉に信念を貫いて頑張ってほしいって思う。

相楽
その点、鞠子は実は恋多き女の子。本の読み過ぎでロマンチストなのか、大学に入ったとたん男の子にキュンキュンするんだけど、そのことを充希ちゃんがうらやましがってた(笑)。
杉咲
いじけてた(笑)! ところで私は食べることが大好きなので、食べるシーンは楽しみのひとつ。撮影用なのにとってもおいしい。
相楽
おいしいよね。映るだけのためなのに、おみそ汁もしっかり出汁をとってあって。
杉咲
だから、戦時中のシーンは演じていて、きつかった。汁にすいとんが1、2個浮いているだけで切なくて。部屋の明かりも暗くして、笑い声も立てずに暮らしているのに、いちばん生きていることを実感する食事もお腹いっぱい食べられないなんて。私たち、役づくりのために、食事を抜いたりしたよね。
相楽
私は朝ごはんをヨーグルトだけにしたり、夜ごはんを減らしたりした。
杉咲
私は、夜ごはん抜いた。でも、おいしい差し入れがあると……(笑)。
相楽
「わあ!」ってつい食べてしまって。空腹に急に食べ物が入るから、逆に吸収がよくて太ったかも(笑)?
杉咲
うんうん。
相楽
つらかったといえば、戦後、鞠子は仕事がなかったから、家族の役に立てていないことをすまなく思っていたの。そこへ「雑誌を作ろう」という、とと姉の提案があって、文章が書きたい鞠子にとってはうれしかった。とと姉のセリフで「このご時世(戦後間もない頃)、すでに失敗しているようなもんじゃないですか(中略)……何もせずにいることのほうが怖い」というのがあって、確かにそうだなあって思えて、迷っていた鞠子も失敗を恐れず行動することができたと思う。
杉咲
とと姉が雑誌作りを提案したとき、最初は美子も驚いたけど、戦争が終わって、少し未来が見えてきたさなかに、とと姉の言葉で「また始まった! 新しいことを思いついたんだ!」って明るい気分になれた。みんなで頑張れることがあるんだなって。
相楽
そのシーンの最後に4人で「エイエイオー!」ってやったよね。まだ子どもだった頃、「小橋常子は皆さんのととになります」って言うシーンでもやったけど、戦後の新たな小橋家の始まりを感じた。雑誌作りで鞠子は文才を、美子は得意のイラストや裁縫を生かせたよね。
杉咲
私自身、小学生のときフェルトのマスコット作りが好きだったから、裁縫のシーンのために練習をするのは楽しくてしかたなかった。
相楽
先に練習していたから、花が先生になってみんなに教えてくれたね。鞠子だけ裁縫のシーンが一切ないけど、細かいレースの手編みとか、私もやってみたかったな。
杉咲
でも、鞠姉はいっぱい書く練習があったよね。
相楽
そうそう。旧字体も覚えて書いた。学生時代の数学の試験シーンでは答えを丸暗記して臨んだの。でも大変だったのに、放送では手元があまり映っていなかった(笑)!
杉咲
えー! 撮影直前に頑張って暗記したのに(笑)!
相楽
ところで、『あなたの暮し』ってすごい雑誌だと思わない? それまでにない雑誌を一から作っていくのだから、当時としては珍しいし、とても難しいことをしているんだと思う。写真付きでホットケーキの作り方を説明したり、広告を一切載せなかったり。プライドを持っていいものを作ろうとしているよね。
杉咲
そうだね。
相楽
戦後の厳しい時代の中でものづくりの大変さが描かれていく後半でも、家族の温かさは描かれている。最後まで小橋家の奮闘ぶりを見届けていただきたいなって思う。
杉咲
私自身この先の物語がどうなるのか分からないから、すごく楽しみ。突っ走るとと姉、大丈夫かなって見守る鞠姉、「待ってよ」って言っちゃう美子、ほほえんで包んでくれるかか。そこに、花山伊佐次さんや水田正平さんといった新しく違う個性を持った人たちが集まって、雑誌作りに奮闘していく。ドラマの中に常にある「ささやかな幸せ」を「なんかいいな」って感じてもらえたらうれしいです。

(『NHKドラマ・ガイド 連続テレビ小説 とと姉ちゃん Part2』より再録)

※この取材は2016年5 月中旬に行われたものです。

相楽 樹さん:スタイリング=NAO(S-14) ヘア&メイク=鈴木ケイコ 衣裳協力=シャツ/MIDDLA(株式会社アルディム03-6447-0193) ショートパンツ/manon(エムケースクエア 06-6534-1177)メタリックレザーシューズ/W&M(INDLE CO., LTD 03-5808-3977)
杉咲 花さん:スタイリング=武久真理江 ヘア&メイク=須田理恵 衣裳協力=WEAR THE PHILOSOPHY/SINDEE/nooca/Binoch

プロフィール

さがら・いつき

1995年生まれ、埼玉県出身。2010年、ドラマ「熱海の捜査官」でデビュー。映画や舞台、CM、ミュージックビデオなどで幅広く活躍。代表作はドラマ「クロユリ団地~序章~」、映画「リアル鬼ごっこ4」「私の男」、舞台「御ゑん祭~近藤さん出ずっぱりだって!?~」など。NHKでは連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」、ドラマ10「紙の月」、BS時代劇「薄桜記」、Eテレ「シャキーン! 観察日誌」「ただいま会議中」などに出演。

すぎさき・はな

1997年生まれ、東京都出身。多数のドラマや映画、CMなどで活躍する。映画「思い出のマーニー」では声優にも挑戦。映画「トイレのピエタ」「愛を積むひと」では第37回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞。ほかの代表作はドラマ「夜行観覧車」「なぞの転校生」「学校のカイダン」など。最新映画「湯を沸かすほどの熱い愛」が2016年10月29日公開。