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インタビュー

『わたし、お月さま』出版記念インタビュー
青山七恵さん × 刀根里衣さん

最終更新日 2016.12.15

ミラノと東京、遠く離れた地から紡ぎだされた1冊の絵本。創作を終えたおふたりに、お話を伺いました。


──青山さんは刀根さんの作品を読まれたとき、どういう印象を持たれましたか?

青山
どのページを開いても色合いがとても優しくて繊細で、1冊の絵本のなかに独特のゆっくりとした時間が流れているように感じました。語られる言葉はとてもシンプルですが、それでいてふしぎな重みと響きがありますよね。刀根さんの描かれる世界は、小さな子どもだけではなく、大人もじっくり時間をかけて楽しめるものだと思います。わたしはとくに『ぴっぽのたび』が好きです。深い海の青と雪の白の質感がすばらしくて、しばらく見とれてしまいました。

──初めての絵本創作はいかがでしたか?

青山
当初、どんなお話にしようかと悩んでいたのですが、刀根さんの絵本を拝読しましたら、すぐに想像がふくらんで子どもの頃のように紙と鉛筆で3つのお話を書いていました。するする書けてびっくりしました。刀根さんが選んでくださった『わたし、お月さま』は、3つのなかではいちばん物語性が強いものです。限られたページ数のなかで、できるだけシンプルに、かつ単調にならないように言葉を整えていく作業には苦労しましたが、刀根さんの絵は言葉以上にお月さまの気持ちを語ってくださったと思います。

──どのシーンの絵がいちばんお好きですか?

青山
いちばんを決めるのはむずかしいのですが、ひとつ挙げるとするならば、お月さまが宇宙飛行士さんと地球を眺めるシーンの絵でしょうか。とても静かでロマンチックなシーンです。

──読者へのメッセージをお願いいたします。

青山
ぜひゆっくり時間をかけて、ページごとに表情を変えるお月さまの冒険を楽しんでください。大人の方は、途中ちょっぴりせつない気持ちになるかもしれませんが、最後のお月さまの輝きが心を元気にしてくれると思います。そしてこの本を読んでくれた小さな子どもたちが、ふだん夜空に見ているお月さまが、なぜあそこで輝いているのか、それぞれにお月さまのお話を作ってくださったらとてもうれしいです。

──青山さんとの共作はいかがでしたか?

刀根
代表作である『ひとり日和』を読ませていただいたとき、まるでガラス細工のような文章だと感じました。感性豊かな透明感のある文章を絵で表現していくということは、楽しくも難しい作業でした。どのようにしたら青山さんの独特な世界を壊さずに、文章と響き合う絵が描けるのか、夜な夜な頭を悩ませたことも……。しかし、ひとりで創作しているときにはない発見がたくさんありました。

──今回はいつもと違い、青山さんが先に文章を創られました。

刀根
はい。わたしの場合、絵を使って物語を思い浮かべ、文章はあとからつめていくので、今回の行程はとても新鮮でした。青山さんから紡ぎ出される文章に、おおいに想像力を掻き立てられました。

──3つのお話からこの作品を選ばれた理由を教えてください。

刀根
この作品のほか、「なまけもののティラノサウルス」と「人類が消滅したあとのうりぼう」の物語をご提案くださいました。どれも魅力的でしたが、「宇宙飛行士を地球に探しにいくお月さま」という奇想天外のストーリーのなかには、わたしには思いつかない要素が詰め込まれていて、チャレンジしてみたいと思ったのです。原案を拝読しおわったときには、具体的なイメージが浮かんでいました。編集者さんには「人物は描かない!」と宣言していたので驚かれたのですが、自然な流れで人物を描くことができました。

──いちばん印象に残っている文章を教えてください。

刀根
ラストのシーンで夜空に戻ったお月さまが、地球を眺めながら言うセリフがとても好きです。自分の運命を受け入れ、月として生きて行くことを決めた様子が描かれていますが、憧れの人に対する甘く切ない感情が入り混じっているようにも思えます。恋に潔く終止符を打ち、前を向いて歩き始めた女性の言葉のようで心に響きました。

──絵の見どころを教えてください。

刀根
冒険を通して誇りと自信を徐々にまとっていくお月さまに、柔らかさと明るさを加えていくことにより、その“変化”を表現してみました。

プロフィール

青山七恵(あおやま ななえ)

1983年、埼玉県熊谷市生まれ。作家。筑波大学図書館情報専門学群卒業。
2005年『窓の灯』で文藝賞を受賞しデビュー。2007年に『ひとり日和』で芥川龍之介賞、2009年『かけら』で川端康成文学賞を受賞。
著書に『すみれ』『あかりの湖畔』『快楽』『めぐり糸』『風』『繭』『現代版 絵本御伽草子 鉢かづき』など多数。

刀根里衣(とね さとえ)

1984年、福井県生まれ。絵本作家。
2007年、京都精華大学デザイン学部卒業。2010年、『なんにもできなかったとり』でイタリアの出版社からデビュー。以来、ミラノ在住。2012年、2013年と連続でボローニャ国際絵本原画展に入選。国際イラストレーション受賞を絵本化した『ぴっぽのたび』は世界から高い評価を受け、話題となる。