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対談

連続テレビ小説「べっぴんさん」
芳根京子(坂東すみれ役) × 永山絢斗(坂東紀夫役)
「坂東家夫婦対談」

最終更新日 2017.02.01

取材・文=江澤恭子
撮影=宇井幸嗣(G.Fプロ)

口下手でいちずで、どこか似ているすみれと紀夫。
一心に夢を追いかけたふたりの思い出のシーン、そして作品への思いを、芳根京子さんと永山絢斗さんが語ります。

ふたりの再会は夢のようにうれしくて

芳根
このところ、すみれと一緒に成長できてるのかなと感じる瞬間が増えてきて、毎日すごく楽しいです。
永山
僕も紀夫の精神的にしんどい部分が終わって、新しいステージになったというのが楽しい。坂東営業部での紀夫は居場所がなかったから、キアリスに移ったことで、居場所探しの片がついたという感じでしょうか。
芳根
私は、戦争が終わっても紀夫さんが帰ってこない、あの長い時間がつらかった。そこから解放されたときの喜びは大きかったです。
永山
結婚してすぐに出征しちゃったからね。収録も紀夫が戻ってくるまでの間、ずいぶん空きましたし。
芳根
だから、ドラマではあんなに一生懸命待ってるわりに、私は永山さんのことをあまり知らなくて(笑)。ただ、ポスター撮影とかでたまにいらっしゃっていたので、物語上は長く会えてないけど永山さんのことは月に一度くらいお見かけしていて、ちょっと不思議な感覚でした。
永山
僕のほうはその間ずっと、頭の端っこで紀夫を温めながら、すみれがひとりで奮闘している様子を映像で見てました。久しぶりにこの現場に戻ってきたときはうれしかったですね。
芳根
私も永山さんが戻ってきてくれて心強かったです。
永山
紀夫が戦争から帰ってきて、すみれと娘のさくらに会うシーンは、クランクインの感覚に近くて、力が入りました。衣裳さんに手伝ってもらって服に穴を開けたり、実はふんどしを締めてもらっていたり。見た目では分からないけど、ちゃんと紀夫が経験してきたことを背負って戻ってきたかったので。
芳根
あの再会のシーンは大好きです。3人で暮らすのが夢だったというセリフもあるのですが、まさにその通りで、すみれとしては、とにかくうれしいというか、夢のようというか。そんな気持ちが湧いてきました。
永山
階段を上がっていくと、緑の中にすみれとさくらが、すごくキラキラと鮮やかに見えました。

すれ違いはあっても思いはずっと変わらない

芳根
紀夫さんとすみれは、「こんな夫婦です」とことばにするのは難しいけど、独特の空気感がありますよね。
永山
夫婦の形ってひと言では語れないからね。たぶん全く一緒というわけではなく、フワッと同じようなところを見ているんじゃないかな。それでいて、深いところで一緒にいる感じがする。何があっても乗り越えていく強さがあるというか。この時代ならではの強さということもあるけど、夫婦って本来そういうものなのかなって感じます。
芳根
今は隣にいるのが当たり前になっているけど、すみれが自分の結婚相手が紀夫さんだと知ったときは、わぁっていう衝撃があって(笑)。恋愛から始まったわけじゃないけど、日に日に紀夫さんの魅力に気づいて日に日に紀夫さんが好きになっていく。こういう形の夫婦もあるんだなと思います。
永山
紀夫のすみれへの気持ちは……うーん、昔のことなのであまり覚えてない(笑)。ちょっと気持ちがすれ違ったりもするけど、紀夫にとっては初恋の人で、ずっと思いは変わらないだろうし、最後まで恋愛していてほしいですね。
芳根
これって恋人同士みたいって感じた時間もありました。特に、すみれが一度仕事を辞めて、夫婦のシーンがぐっと増えたとき。さくらのクリスマスプレゼントを作るために一緒に買い物をしたり、大急百貨店に出店したキアリスのお店を見に行ったり。ふたりで出かけることってそれまでほとんどなかったから、思い出深いシーンです。
永山
ブリキ缶で子供たちのクリスマスプレゼントを作ったのもすごく楽しかったね。
芳根
もう純粋に楽しかった。永山さんはほっといても勝手に作りだしそうな勢いでしたよ。
永山
夢中になったもんね。
芳根
永山さんが細かいところまで丁寧に作っていくので、私もそれがおもしろくて。今、振り返ってみると、あのクリスマスのあたりは、恋人っぽいシーンが多かったな。

怒った紀夫さんも新鮮だった

芳根
ふたりの間には強い信頼感があるから夫婦の危機っていうことではなかったけど、すみれが大急百貨店のレイアウトのために朝帰りをしてしまって、紀夫さんにビンタされたときは、ちょっとやばいって思いました。
永山
帰りが遅くなっただけなのにね。僕としてはなんでそんなに怒るんだろうと(笑)。でも紀夫のこういう感情を表現するシーンは、この先も出てこないのかなと思ったので、ある程度強めにやっておこうと。
芳根
私としても、あんなふうに怒られることってないので、あのシーンは新鮮に感じました。すみれにとっては大変だったけど、それでも紀夫さんを信じていられるのがすみれなんだと思います。
永山
危機と言えば、高校生になったさくらが、すみれに反発して家出しちゃったというのが坂東家にとっては危機だよね。
芳根
そんなときでも、さくらとすみれの関係にはあまり口出ししてこないところが紀夫さんらしくていいなと思います。夫婦の気持ちがちゃんとつながってるからですよね。
永山
うーん、嫌われたくないというのもある。妻からも娘からも、個人的にも(笑)。それに、そういうことをあまりうるさく言わないというのがこの時代の人の美学だと思うから。
芳根
すみれも人に甘えるのがあまりうまくない。負けず嫌いというか頑固というか。母親としてのプライドや責任感もあるのかな。以前のすみれなら口にしないようなことも言えるようになったし。何より、さくらを幸せにしたいという強い思いがあるんです。

時代が飛んで作品の空気も変わった

芳根
最近は子供たちも成長してキャストの皆さんもずいぶん入れ代わったし、現場の雰囲気も少しずつ変わってきましたね。
永山
物語の舞台が10年後に飛んだからね。僕としては、役を理解した上で年齢を一気に上げるというのは、こんなにも楽しいものなんだと思いますね。
芳根
私も今は楽しいけど、最初は時代が飛ぶのは怖かったです。改めてクランクインするみたいな怖さというか。
永山
夫婦の話だったのが親子の話になっていくっていう違いがあるからね。ちょっと別の作品をやっているような感じもするかな。
芳根
作品の空気が変わりましたよね。でも、周りの人も同じように年齢が上がるし、さくらも大きくなるので、そうした周りの環境に助けられている部分はありますね。自分が30代の役をやるなんて想像もしてなかったし、やったことがないことだから怖いんだと思うんです。でも、それに立ち向かうチャンスをいただいているのはすごく幸せなことだと感じます。30代くらいの方にお話を聞いたり、自分でも調べてみたり、できることを探して、出せる力は全部出したいです。
永山
僕は、紀夫らしい部分は持っておきながら、親の立場ってどうなんだろうと考えていかないと役を深くつかめない感じがして。演じながら自分の親はどうだったんだろうとか、女の子がいる父親というのは、また特別なんだろうなとか考えてしまう。だから台本の読み方も変わってきています。でも、それがおもしろい。紀夫と一緒に成長している感じがします。

愛のある現場だから頑張れる

芳根
このところ、「折り返したね」って言われることが多くて。これは終わらないんじゃないかと思う瞬間もあったけど、いろいろなところでそのことばを聞くたびに、ちゃんと終わりってあるんだなと。なので、ここにいる時間は一瞬も無駄にしたくない、自分ができることをまだまだ探して、悔いなく終わりたいって強く感じます。
永山
僕は途中で収録が空いたというのもあって、終わらないんじゃないかというより、このまま終わってしまうぞというほうが強くて。たぶん楽しいんでしょうね。こういう、最終的には60歳を超える役柄を演じられる作品に関われていること自体すごく幸せだし、芳根ちゃんがヒロインの作品に出演して、しかもその夫を演じているということがすごくうれしい。
芳根
泣きそう。泣いてもいいですか。泣きます。やばい(涙)。
永山
(照れて)なんていうか、自分の年齢を超え始めてからは、ごほうびだと思いながらやっています。もうゴールデンロードを突っ走ってる感じです。細かいところまで目配りしながらもよけいな力は抜いて最後までやれたらなと思いますし、やっぱりこのスタッフで、このキャストでお芝居ができてるというのがすごくいい。
芳根
スタッフさんたちやキャストの皆さんも、本当に愛のある現場だし、それを感じるから頑張れるんです。その愛が作品に映っていればいいな、皆さんに伝わっていればいいなって思います。
永山
芳根ちゃんは周りに愛があるからって言うけど、芳根ちゃんがそんなふうに言うから周りがそうなっていくんだと、撮影する中で毎日感じますよ。
芳根
(嬉)。紀夫さんとすみれは、このままかわいい老夫婦になるんだろうなと勝手に思っていますが、どうなるんですかね。
永山
そこは台本しだい(笑)。でも、何年かあとに、あの夫婦よかったねと思い出してもらえるシーンやセリフを残せるような夫婦の形ができたらいいよね。

(『NHKドラマ・ガイド 連続テレビ小説 べっぴんさん Part2』より再録)
※この対談は2016年11月中旬に行われたものです。

プロフィール

よしね・きょうこ

1997年生まれ、東京都出身。2013年、ドラマ「ラスト♡シンデレラ」でデビュー。主な出演作に、映画「物置のピアノ」「先輩と彼女」「64―ロクヨン―」、ドラマ「仮面ティーチャー」「探偵の探偵」「表参道高校合唱部!」「モンタージュ 三億円事件奇譚」など。NHKでは、連続テレビ小説「花子とアン」に出演。

ながやま・けんと

1989年生まれ、東京都出身。2007年、ドラマ「おじいさん先生 熱闘篇」でデビュー。10年、映画「ソフトボーイ」で映画初主演、日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。主な出演作に、映画「ふがいない僕は空を見た」「アンフェア the end」、ドラマ「ごめんね青春!」「重版出来!」など。NHKでは、連続テレビ小説「おひさま」、「一路」などに出演。