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リポート

『官能植物』刊行記念イベントレポート
木谷美咲×村田沙耶香×藤野可織
「女たちが愛でる、植物の美とエロス」

最終更新日 2017.09.29

日時:2017年7月21日(金)20時~22時
場所:本屋B&B(下北沢)

7月21日金曜日の夜に、下北沢で、『官能植物』の刊行記念イベントが開催されました。
著者の木谷美咲さんと一緒に植物トーク&官能トークを繰り広げたのは、作家の村田沙耶香さんと藤野可織さん。お二人とも植物好きで、さらに芥川賞受賞作家でもあります。木谷さんと年齢も近いということで、話がどんどん展開し、とても深くて濃いトークとなりました。当日の様子をレポートいたします。

「めくっても、めくっても黒い本で、帯の裏まで黒く、すごく美学を感じました」(村田沙耶香)

◆好きな植物

木谷美咲
私は食虫植物が好きです。特にハエトリソウ(ディオネア)に出会ったことで食虫植物にはまりました。何でこの形を魅力的だと思うんだろう、とずっと考えていました。そして、あるとき天啓のように、「官能的だからだ」と気づいたんです。それが『官能植物』を書くきっかけとなりました。
村田沙耶香
今日はお招きいただき、ありがとうございます。私は多肉植物が好きです。でも育てるのが難しくて、水をやりすぎて枯らしてしまったりしているので、今日はお二人にいろいろ勉強させてもらおうと思っています。
藤野可織
私も村田さんと同じくとにかくよく枯らすので、植物に申し訳なく思っています。年末に、私が一番大事にしていた大きくてかっこいいユーフォルビア‘ホワイトゴースト’が枯れてしまい、もう半年くらい、その死体を眺めて過ごしています。

◆『官能植物』の感想

藤野
とてもおもしろく読ませていただきました。写真もきれいだし、写真だけでなく文字情報も読み応えがありました。ハエトリソウやメセンなどは私も知っていたのですが、知らない植物もいっぱい載っていました。またブッシュカンのように知っている植物でも、性的な魅力があると考えたことはなかったんですが、読んでなるほど、と思いました。
木谷
ありがとうございます。手の形をしている柑橘のブッシュカンですが、私は指に似ているというところにフェティッシュなものを感じました。なるほどと思ってもらえてうれしいです。

藤野
『官能植物』に出てくる中で、私が一番好きな植物は絞め殺しの木です。宿主を殺してしまって、そこに空洞が残るというのが、とてもロマンがあると思いました。イチジクとイチジクコバチの関係は、昔テレビで観たことがあったのですが、すっかり忘れていて今回この本を読んで思い出すことができました。虫の生殖活動を利用した生態の中でもすさまじいですよね。

村田
私は、最初にこの本が届いたときに、まず、その装丁の美しさに驚きました。写真も美しいんですが、それだけではなく、文章も文学の話や歴史の話などからの引用が素晴らしくて、すごく知識のある方が、「植物の官能」というテーマに絞って書かれたんだなと思いました。めくっても、めくっても黒い本で、帯の裏まで黒く、すごく美学を感じました。私も小さい頃、ハエトリソウが好きで、小学校で食虫植物について教わったときに、弱い植物が虫を食べるということが、とても魅惑的に感じたんです。とにかくかっこよく思えました。そして、溶けていく虫ってどんなだろうと想像したら、私にはエロティックなものとして感じられました。植物図鑑でも食虫植物のページばかり見ながら、いつか本物が見たいと思っていたのですが、『官能植物』を読んで、そんな子供の頃のことを思い出しました。
木谷
ありがとうございます。最初にお話してくださった装丁ですが、この本は装丁を褒めていただくことが多いです。官能と生と死というのは密接に結びついているものだと思うのですが、そのコンセプトを良く表現してもらったと思っています。仕上がりが墓石っぽいんですよね。死から植物が浮かび上がる感じに仕上げていただき、デザイナーさんにはすごく感謝しています。

◆「植物部」について

木谷
村田さん、藤野さんのお二人は、「植物部」という活動をされているということですが、この植物部がどんな活動されているのか、とても関心があるので、ぜひ教えていただきたいです。
藤野
東京本部のほうがちゃんと活動されているので、東京本部の村田さんから、ぜひ。
木谷
ということは支部があるんですか?
藤野
はい、私は関西支部長です。ただ、関西の構成員は私しかいないんですけど。
村田
では、私から。とある編集者さんが、青山七恵さん(作家)と羽田圭介さん(作家)と居酒屋で、観葉植物の愛について語る会を開いたそうなんです。それがきっかけになって、その編集者さんを部長に、通称「植物部」が始まったと聞いています。私も誘われて、他にも植物に興味のある作家が何人か参加して、部活としてスタートしました。最初のころの活動は、とにかく植物を買いにいくというものでした。一人ではあんまり行かないような、バスを乗り継いでいくような場所の大きくておしゃれなお店にみんなで買いにいったり。加藤千恵さん(歌人・作家)が部員になってからは、部長の家の植物を見にいくとか、草むしりをするとか、鍋をするとか、サークル活動的な、買う以外の活動もするようになりました。最初は作家がメインでしたが、最近ではイラストレーターの方など、部員もふえました。あと、植物部のLINEがあって、「今日枯れました」という投稿が送られてきたり、「今日咲きました」と誰かが投稿したり、直接会ってなくても「あー、藤野さんのあの子が枯れたんだな~」とか、そんな情報が入ってくる部活です。
藤野
はい、その通りです。私はさきほども申し上げた通り、たったひとりの関西支部部長なので、なかなか東京での活動には参加できなくて、一人で育てて、一人で枯らしています。でも枯らしたら見てもらいたいからLINEで写真見てもらってます。
木谷
楽しそうですね。植物部に入る条件ってあるんですか?
村田
特にないですけど、部長が完全紹介制って言っていたので、紹介制のようです。
木谷
園芸の専門家たちに、植物を育てるコツをきくと、みな一様に「観察力が大事」と答えるんですよ。作家のみなさんは観察が得意なはずなので、きっと植物に向いていますよ。
藤野
あっでも私はあんなによく枯らすということは、観察できてなくて大事なサインを見逃してるんだと思います……。