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インタビュー

連続テレビ小説「まんぷく」
安藤サクラ(ヒロイン・立花福子 役)

最終更新日 2019.02.01

取材・文=金原由佳

前回(本誌Part1)の取材から4か月が過ぎた今、ヒロイン・福子を演じる安藤サクラさんに、その後の心境や収録終盤に向けての意気込みについて伺った。

福ちゃんの人生と並走して

「まんぷく」への出演が決まった後、周囲から「朝ドラのヒロインは大変でしょう」と心配することばをいただきました。撮影前は私もそう思っていたのですが、いざ始まって今に至るまで「こんな幸せな時間はない」という感想しかありません。すべての人に朝ドラのヒロインを演じるチャンスが訪れてほしいと感じるほど。そう思えるのは、「まんぷく」チームへの信頼感があるからです。
 実際に経験して分かったのは、演出部を筆頭に技術部、美術部、衣裳部、メイク部など、スタッフさんといる時間が圧倒的に長いこと。私は、自分の出番がくるまではスタジオで収録中の映像が見られる副調整室でよく過ごすのですが、本当にこのチームの熱意と、「福ちゃん」というキャラクターから元気をもらっていると実感します。
 特に支えられているのは、福ちゃんの人間性。彼女の物事の考え方に触れて、世の中を見回してみると心地いいんです。それはやはり、彼女の頼もしさに尽きるんじゃないでしょうか。「まんぷく」にはメインで3人の監督がいて、福子の見せ方に少しずつ各監督の個性が表れています。でも、どの方が演出しようともぶれない福子というのがいて、私はそこに意識を向けながら演じています。
 ──華やかな大大阪時代から始まり、太平洋戦争の勃発と疎開。戦後の塩作りから、「もはや戦後ではない」と言われた時代まで……。長きにわたって福子を演じていきますね。
 責任を持って自分の肉体を通して向き合うということが、すごくいい経験になっています。脚本に「泣く」とは書いていないシーンでもおのずと泣いてしまうのは、福ちゃんと萬平さんの歩みに喜怒哀楽の揺れが激しく、福田靖さんの脚本からふたりの感情が4Dのようにあふれ出てくるからだと思います。
 その福ちゃんと7か月も一緒にいると、不思議なことに、自分の過ごしている時間とふっと重なるところが出てくることがあります。福ちゃんが困難に直面し、打開する方法を見つけていくたびに、私にとって未熟な部分を補う「何か」を見つけられるのだと思います。もし、福ちゃんの人生と並走していなかったらどうなっていただろうと考えるくらい、福ちゃんと私の人生がパラレルワールドのように思えるときがあったほどです。

この体験は大事な宝物

 ──戦局が悪化して、これまでとは違うんだと福ちゃんが自覚する時代の変わり目を描くシーンを、後ろを振り向くその一瞬で表現しているところに、15分という短い時間だからこその挑戦だと見ていて感じました。そういった時間の描き方は、1回15分を半年間放送する朝ドラならではの楽しみ方ですね。
 放送が半年もあるので、「この人、こんなキャラクターだったの?」と登場人物の変化が楽しめるのもおもしろいです。松坂慶子さんや橋爪功さんという大先輩から、歌舞伎界からは片岡愛之助さん、ミュージシャンでは浜野謙太さんやMONKEY MAJIKのメイナード&ブレイズ・プラントさんなど、歩んできた背景が異なる方々と今回お芝居できているのは刺激的で、この体験は大事な宝物になると思います。
 今、萬平さんが47歳、福ちゃんが37歳となり、またゼロから再出発をしているシーンを収録しています。ひとつ思うのが、「なぜ福ちゃんは、ひたすら萬平さんを信じていられるのか」ということ。「萬平さんならできる」と繰り返し言い続ける福ちゃんに、「大丈夫かな?」と思うこともあります。でもよく考えてみたら、福ちゃんと同じように、私もまた夫に対して根拠はないけど確固たる信頼があるなって共感できるんです。そして、福ちゃんにとっては、萬平さんが何かを生み出すまでの過程を一緒に体験することが、信じることにつながる何よりのワクワクなんだと思います。
 先日、戦後の昭和の時代性をつかむため、喜劇映画の「社長シリーズ」を見ていたらおもしろいやり取りを見つけ、後日、長谷川博己さんに「ああいうことやってみたいなあ」と動画をお見せしたことがあって。そのときは「ふーん」くらいのノリだったのですが、その後、あるシーンの収録で突然やってくれたんです。「ここで!?」というサプライズで、萬平さんとしても長谷川さんとしても意表を突く、粋な計らいでうれしかったです。
 皆さんの温かいサポートを受け、クランクインのときはハイハイをしていた私の娘もスタジオを走り回るようになりました。「まんぷく」チームの作り上げるひとつの結晶のようにすくすくと育っていることに、時間の経過を感じます。クランクアップの日が来てほしくないと思うほど、福ちゃんの人生は彩り豊か。まだ見えないゴールを楽しみにしています!

(『NHKドラマ・ガイド 連続テレビ小説 まんぷく Part2』より再録)

プロフィール

安藤サクラ(あんどうさくら)

1986年生まれ、東京都出身。2007年、映画「風の外側」で女優デビュー。主な出演作に、映画「愛のむきだし」「愛と誠」「0.5ミリ」「百円の恋」「万引き家族」、ドラマ「ゆとりですがなにか」など。NHKでは、連続テレビ小説「おひさま」、「書店員ミチルの身の上話」「ママゴト」などに出演。