人気・実力を兼ね備えた執筆陣が贈る連載・読み物や豪華インタビューなど、
NHK出版が刊行する書籍(新書・翻訳書・文芸書・教養書)をご紹介するサイトです。

特別寄稿

12歳からはじめよう
学びのカタチ
優くん式「成績アップ」5つの秘密

佐藤 優(さとう・まさる 文)
+西原理恵子(さいばら・りえこ 絵)

最終更新日 2019.10.01

 最初に自己紹介をしておこう。
 ぼくの名前は佐藤優。職業は作家、文章を書くことを仕事にしている。新聞や雑誌にも文章を書いているから、毎日がしめきりの連続だ。最近は作家としての仕事以外に、高校生や大学生に勉強を教えることも多い。
 でも、最初から作家だったわけじゃないんだ。ぼくは大学院を終えると、外務省の専門職員(外交官)になった。そこでロシア語を勉強して、ソ連という国に関係する仕事をしたんだ。ソ連というのは、いまのロシアの昔の名前だね。正式には、ソビエト社会主義共和国連邦〈れんぽう〉。これを省略して「ソ連」という。
 実際に、ソ連に住んで仕事もしていた。日本に帰ってきたあと、ある事件にまきこまれて逮捕され、「檻〈おり〉のなか」に入れられてしまった。それもあって外務省を退職して、作家になったんだ。ブッソウなやつだと思ったかもしれないね。でも、ぼくがどうして逮捕されたのか、その背景になにがあったのか、くわしい事情は『国家の罠〈わな〉』という本にまとめた。すこし読んでむずかしいと感じたら、高校生や大学生になってからでもいい、ぜひ読んでみてほしい。
 この文章は、12歳になったきみたちにむけて書いた。いままで100冊以上も本を書いてきたけれど、じつは、きみたちの年齢にむけて直接、話しかけるのははじめてのことなんだ。ちょっと照れくさいんだけど、ぼくを「優くん」と呼んでもらってかまわない。ときには「上から目線」になってしまうかもしれないけど、基本、きみたちの仲間だと思ってほしいんだ。

「新学習指導要領」って知っているかい?

 なんでぼくが、きみたちに直接話しかけたいと思ったのか。ちょっとカタい話になるけど聞いてほしい。
 いま、学校で教える内容をふくめて教育のありかたが大きく変わろうとしている。2021年から新しい大学入試の制度がはじまるんだ。
 きみたちが将来、大学の入学試験をうけるときには、記憶力だけでなく、知識を使って考える力が求められる。それから、国語や社会などの文科系、理科や数学など理科系、どちらの勉強も必要になる。数学がまったくできない人や、歴史や地理についてぜんぜんわからない人は、大学に入るのがむずかしくなっていくんだ。
 また、英語では、「読む力」「書く力」「聞く力」「話す力」という総合的な能力が試されるようになる。だから、いままでの高校生に比べて、たくさん英語を勉強しなければならなくなる。
 大学入試が変わるのにあわせて、高校や中学校、小学校で教える内容も変わっていく。文部科学省が発表した「新学習指導要領〈しんがくしゅうしどうようりょう〉という新しい学習内容が、幼稚園、小学校、中学校、高校の順番で取りいれられていく。中学校では、2021年度から、いままでとはちがう教科書で勉強するようになる。
 この新しい学習内容の目玉として「アクティブ・ラーニング」と呼ばれるものがある。アクティブ・ラーニングとは、自分から積極的に取りくんでいく学習のこと。すでに授業に取りいれている学校もあると思う。これからは、たんに知識を教わるだけでなく、自分で調べ、考えるような授業が多くなっていくだろう。


学びのカタチは、わずか5つ

 こんな状況にどう対応したらいいんだろう? いままでの勉強のやりかたがもう通用しなくなるなかで、きみたちのお父さんやお母さん、そしてきみたちもまたとまどっているかもしれないね。だからこそぼくは、状況がどう変わっても影響をうけないような、「学びのカタチ」を、きみたちに伝えたいと思っているんだ。ここでいうカタチとは、

 「ものごとを学ぶ姿勢」

 のこと。「型〈かた〉」と言ってもいいかもしれないね。具体的な知識のことではないよ。どんな勉強にも応用できるし、きみがこの先、受験をしたり、おとなになって仕事をしたりするときにもかならず役にたつものなんだ。
 学びのカタチは、わずか5つ。

 ①「ワザありの時間管理術」
 ②「90分間、机にむかって集中するコツ」
 ③「苦手なところ・弱いところを自覚する方法」
 ④「スイスイ暗記するための奥の手」


 この4つはいずれも基本的なことだよ。でも、おとなでもきちんとできていないことが多いんだ。そして、もっとも重要なのが、

 ⑤「インプットとアウトプットの方法」

 いま、アクティブ・ラーニングの話をしたよね。インプット(入力)とアウトプット(出力)、この2つをじょうずにこなすことさえできれば、アクティブ・ラーニングだってコワくはない。他人の意見にふりまわされることなく、自分で考えて判断することができるんだ。


なんで「12歳から」なんだろう?

 この5つの「学びのカタチ」を、ぼくは12歳になったきみたちに、ぜひ身につけてほしいと思っている。なんで12歳かって? 中学に入学する前に、この5つが身についていれば、中学での勉強がとてもやりやすくなるはずだ。きみが中学受験を考えているならば、受験はグンと有利になるだろう。もちろん、中学に入ってからでも遅くはない。中学生のあいだに、学びのカタチをしっかり自分のものにしてほしいんだ。
 なぜって、中学での勉強は、高校や大学での勉強の土台となる、とっても大切なものだから。カタチが身についていないままだと、勉強したところで思うような結果は出ないし、そのため勉強ぎらいになってしまうことも多い。
 ぼくは、これまでおとなにむけて、いろんな勉強のしかたを伝えてきた。勉強が苦手、という人の話をきくと、たいていは中学のときの勉強の基本ができてないんだ。
 中学生のときに勉強がイヤになってしまい、むずかしい数学を勉強して何の役にたつんだ、と思って、数学の勉強をあきらめてしまったり、歴史をおぼえたって将来役にたたないだろうと、社会の勉強をしないままおとなになってしまう。でも、社会に出て仕事をするようになると、数学や歴史の知識が仕事に必要なことに気づくんだ。
 そういうおとなたちには、中学生の教材をすすめるようにしている。
 なんで12歳なのか、もうわかっただろう。中学に入学する前に「学びのカタチ」ができていれば、しめたもの。おとなになってから教科書をやりなおす必要もない。「12歳から」といったけれど、もちろん、きみが11歳でも、あるいは10歳でもまったく問題はない。

 さて、5つの「学びのカタチ」を全部紹介できるといいんだけど、残念なことにスペースがかぎられている。そこで、ここでは5つのうちでみんながいちばん苦手な暗記の話をしよう。
 5つのカタチについては、NHK出版から10月に刊行する予定の本にくわしく書いたので、ぜひそちらを読んでほしい。カタチを中学の主要5教科に応用する方法についてもまとめてみた。読めば成績がアップすることを、この優くんが保証するよ。

  • 1
  • 2