イモトアヤコ

Interview | 2021.08.12

テレビ番組の企画で世界各国にてロケを敢行し、その姿がお茶の間で愛されているイモトさん。世界を飛び回る彼女が教えてくれた「学びの秘訣」とは?

Profile

イモトアヤコ(いもとあやこ)|鳥取県出身、1986年生まれ。NHK Eテレ『テレビで中国語』、日本テレビ『世界の果てまでイッテQ!』、TBSラジオ「イモトアヤコのすっぴんしゃん」にレギュラー出演中。エッセイ『棚からつぶ貝』(文藝春秋)が好評発売中。

聞き手:NHK出版……

イモトさんといえば「旅」のイメージが強いのですが、今回は「つづけていること」として「読書」を挙げてくださいました。読書は小さい頃からつづけていらしたんですか?

いえ、実は学生の頃はそんなに本は読んでいなかったんです。たくさん本を読むようになったのは、仕事をするようになってから。海外ロケで飛行機とか移動時間が多いので、自ずと本を読むようになりました。今でこそ機内でWi-Fiとかもつながりますけど、当時はタブレットで動画を見るといった手段もなくて、本がいちばん用意しやすい娯楽だったんです。ロケの移動時間=読書の時間、という感じで、本を読むようになりましたね。

なるほど。旅のスケールが大きいぶん、移動時間も長いですもんね……。ちなみに、どんなところで本を選ぶんですか?

ロケに行く時とかにまとめて空港の本屋さんで買ったり、電子書籍をダウンロードしたりが多いです。でも本屋さんは普段からもよく行きますよ。なんだか落ち着くんですよね。ひとり行動が多いので、ひとりでいるときにいちばん不自然じゃない場所が本屋さんというか……(笑)。

本屋さんって人がいたとしてもそれぞれ各々好きなことをしてるじゃないですか。周りを気にしてないし、静かだし、そういうところも好きなんです。情報もお店の中に溢れているから、今の世の中ではこんなことが流行っているんだ、ということも仕入れられる。誰かと待ち合わせするときの待ち時間にもふらっと立ち寄ったりしてます。

海外ロケに行く際、その国にまつわる旅の本などは読まれますか?

その国についての本もそうですが、やっぱりそもそも旅の本が好きなんです。たとえば、さくらももこさんの世界を周る本も好きですし、冒険系の旅の本も好きです。最近は海外に行けていないので、国内や東京を旅する本とか、あとは伊丹十三さんの『ヨーロッパ退屈日記』だったり、写真付きのベーシックな旅の本だったり、旅している気分になれるものは好きです!

でも思えば、自粛期間なんかでやけに時間があるときは、逆に本を読まなかったかもしれません。バタバタしている忙しい時の方が集中できるのかも。読書が、仕事のオンとオフの切り替えになっているのかもしれないです。

さくらももこさんの本や『ヨーロッパ退屈日記』など、エッセイがお好きそうですね。

そうですね! さっきもお話に出たんですけど、子どもの頃はどちらかというと活発に動くのが好きで、本はあんまり読んでいませんでした。でも、小学生の時にあった朝の10分読書という時間で、さくらももこさんのエッセイに出会ったんです。選んだ理由は「絵が可愛かったから」なんですけど……(笑)。確か『もものかんづめ』だったかな。読んでみたらすごく面白くて、本で笑うぐらい面白いことってあるんだ、って感動したんです。

その出会いをきっかけに、本が好きになったんだと思います。そこが読書の入り口だったので、今でもエッセイは大好きですね。

普段の読書も、エッセイが多いですか?

小説よりはエッセイが多いです。エッセイって細切れで読みやすいんですよね。

長編小説だと、一回途中で読むのをやめると、読み直さないと分からなくなったりすることがけっこうあるんです。一気読みできればいいんですけど、移動時間で読むことが多いので時間にも制約があって。エッセイだと都度都度読みができるから、私の読書スタイルに合ってるんです。

もちろん小説を読まないわけではないんですけど、やっぱりエッセイを手に取ることが多いです。

今回、ご自身のお気に入りアイテムということで持ってきていただいたのも、池波正太郎さんの『男の作法』ですもんね。渋いチョイスにちょっとびっくりしましたけど(笑)。

これ、本当に素敵な本なんですよ! でも実は池波さんの小説はほとんど読んだことがなくて……(笑)。

池波さん以外にもエッセイのお好きな作家さんはいらっしゃいますか?

白洲正子さん・松浦弥太郎さん・林真理子さん・西加奈子さんといった作家さんも好きですね。

エッセイってそもそも、憧れの人のプライベートな部分を覗き見できる感覚があって……。今でいうYouTube動画に近い気がします。例えば松浦さんだったらモノを紹介するエッセイもあったりして、それをマネして買ってみたりとか。

憧れの人の生活を知りたい、生き方を知りたいというのを叶えられることもあって、エッセイを手に取ることが多いですね。

では、今回持ってきていただいた『男の作法』ついて教えてください。男性向けのイメージが強い本かと思うんですが……。

個人的にこの本は、全人類に通じる本だと思ってます(笑)。

私、粋なおじさんがすごく好きで。ハット被ってステッキ持っているとか、それこそ白洲次郎さんとかが好きで。おじさんが持っているものとかにも惹かれるんですよ。女性的なふわふわキラキラしているものより、男性色の強い無骨な道具が好きというか。それもあって『男の作法』はすごく好きで。お寿司屋さんや天ぷら屋さんの話を読んで、ひとりで行ってみたりしましたね。

はじめて手に取られたのはいつか覚えていますか?

それもやっぱり何かのエッセイで勧められていたのを見て、読んでみたんです。
ちなみに、旦那のお父さん=義理の父も、旦那に『男の作法』読むように勧めてました(笑)。
その話を聞いて、やっぱり男が男に勧める本なんだとか、お義父さんと話が合いそうだなと思いました(笑)。ちなみに、2500円でめちゃくちゃ良いお寿司が食べられる時代に書かれた本ですけど、今にも通じる内容な気がしますね。感覚というか生き方というか、そういうのが現代にも通じると思っています。

何度も読み返されてそうですね!

今回も改めて読み返しましたし、度々ですね。

有名な一節でいうと「てんぷら屋に行くときは腹をすかして行って、親の敵にでも会ったように揚げるそばからかぶりつくようにして食べていかなきゃ、てんぷら屋のおやじは喜ばないんだよ」というのがあります。

天ぷらに限らず揚げ物とか熱いものは、作り立てをすぐ食べなきゃいけないっていうのは、当たり前のことですけど、改めて心掛けるようになりました。

ほかにも、おしゃれについて書かれている部分で「自分のおしゃれをする、身だしなみをととのえるということは、鏡を見て、本当に他人の目でもって自分の顔だの躰だのを観察して、ああ、自分はこういう顔なんだ、こういう躰なんだ、これだったら何がいいんだということを客観的に判断できるようになることが、やはりおしゃれの真髄なんだ」というところがあって。

深いですよね。好きなものを着るっていうのもありだけど、顔と体型をきちんと客観視するっていうのは、すごく大事だな、自分も洋服を選ぶ時に心掛けようと思いました。

確かに、性別問わず通じるお話ですね……。

ほかにも「人間という生き物は矛盾の塊である」という言葉もすごく響きましたね。

この矛盾の話と別の章に書かれているんですが、人間は死に向かって生きていて、それを漠然と意識することで、ご飯もより美味しく感じ、より一生懸命働けるようになる……。人間は矛盾しているけど、矛盾しているからこそ人生は楽しめるって思うと、すごく響いたんです。

直接的な「旅」についての話ではないんですが、こんな言葉も印象に残ってます。

「旅行のみならず、やっぱり求心力というのは大事なものだね。ぼくの場合、何かこうしたいと思ったら絶えずそのことを思っていれば、何かにつけてそのことを目指して、無意識のうちに少しずつ段取りを進めていくからね、だから自然にそうなるということになるんだよ」

ほんとにその通りだなと思って。意識するというか、引き寄せじゃないですけど。そのことを考えていたり発信したりしていると実際そうなることって多いので。スピリチュアル的なことじゃなくて、実際にそこに意識があると、そっちの方に自然と向かえるのかなって思うんです。

イモトさんにとっての学びが詰まってますね。

本質的な部分というか哲学、みたいなものを学んでいる気がします。なので、ちょっと教えを請いたい、みたいな時に読むことが多いかもしれないです。

池波さんのエッセイ以外でも、印象に残っている学びはありますか?

松浦弥太郎さんの『伝わるちから』という本に「聞き上手になる」という項目があるんですけど、そこに「聞き上手はちいさく感動することだ」って書かれていて、それは意識して続けていますね。

あと松浦さんだけじゃなく池波さんも書かれているんですが、「手紙を書くときはその人に話しかけるように文章を書く」っていうのは実践しました。自分が実際にエッセイを書いたときにも、読者の方にお手紙を書くような感じで執筆しました。

積極的に行動に取り入れているんですね。

オリジナリティが大事だと思っていた時期があったんですけど、色んな人の話や本を読んで、そんなものないなと思うようになったんです(笑)。

それからは、良いと思ったのはとりあえずマネるようになったんです。そうしたらそれが自分の中のものと混ざり合って、結果オリジナルになる。もしかしたら、良いものをマネるためにエッセイを読んでいるのかもしれないです。

人が良いって言ったものは、1回目は信じてやってみるようにしています。それでイヤだったら、2回目やらなきゃいいだけなので。

マネたり取り入れたり、というお話の流れで、中国語についても伺っていいですか?イモトさん流の勉強法はありますか?

この年齢でこんなにコンスタントに学ぶってことはなかなかないので、毎回新鮮な気持ちで臨めています。収録が2週間に1度あるんですが、その前日までに復習をがんばってます。だけど中国語は難しい!

復習する時は、書いて声に出すっていうスタンダードな「マネ」が基本です。わからないことは先生にLINEで聞いたりもしますね。

イモトさんといえば海外ロケも多く行かれていて、コミュニケーション力も高いという印象があるのですが、語学はやっぱり難しいですか?

苦手意識はあんまりないですよ。英語も好きですし、なんとなくでも伝わるんですよね。

中国語に関しては文字はなんとなくわかるんですけど、リスニングが難しいなって思ってます。中国語って発音が8割って言われている言語なんですよね。聞いたことない音だし、息を出す音とかも子音によって全部強さが違ったりして。だから勢いよく言わないと、中国人同士でもコミュニーション取れないんだなっていうのは学んでわかりました。

中国ロケで喋れるようになりたいので、もっともっと頑張りたいなとは思っています!

では最後に、イモトさんの学びの秘訣について教えてください。

そうですね……。例えば本の選び方で言うと、知り合いにいいよって言われたらすぐ読んじゃうんです、わたし。影響されやすいので(笑)。あと、エッセイで著者がお勧めする本なんかから、どんどん芋づる式に読んだり……そういう口コミみたいなものって、信用できるんですよね。

そんな意味では、本や人や、いろんな材料からマネをして学ぶっていうのもあると思うんですけど、その前段階みたいなところで、周りの人に向けてとか、SNSとかで自分が学びたいこと、やりたいことについて「発信する」「オープンにする」のがいちばんの秘訣かもしれないです。

池波さんのエッセイに書かれていた引き寄せ、じゃないですけど、意識して、発信して、オープンにしていくと、情報がもらえたり、周りから続いてるの?って声を掛けられたりするんです。自然と学びも広がっていくし、やらなきゃって続いてくような気がします。

それにひとりじゃなくてみんなでやっているような気持ちになって、頑張れるんですよね!

イモトアヤコさんの学びの秘訣

STAFF

  • Photo : Masataka Nakada
  • Hair&Make-up : Shiera Sasaki
  • Text&Edit : Shun Inoue

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