1930年代 黎明期&戦前のNHKテキスト

スペシャル②|NHKテキストクロニクル

NHK出版によるテキスト発売開始から90年&NHK英語講座を題材にした連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」放送に合わせ、テキストの歴史を振り返る特集〈NHKテキストクロニクル〉がスタート!NHK放送博物館でおこなわれた貴重な対談インタビューや、1930-60年代までの特徴的なテキストを取り上げた企画など、全6回でお届け。

UP DATE | 2021.11.05

第2回は、戦前の1930年代のテキストを取り上げていきます。目を見張るのが、バラエティに富んだテキストの内容。まずは時代背景から見てみましょう!

NHK出版の設立とテキスト誕生

そもそも日本でラジオ放送がはじまったのは、1925年3月22日。そこから3年かけ、全国での中継放送が実現します。それに伴い番組も多様化。そして1931年、教育系番組の増加に伴い、全国で番組とセットで使う学習書=テキストを販売できる専門の出版社が必要となり、日本放送出版協会=現NHK出版が誕生します。

講義を耳で聞くからこそ、目で見て学べるテキストは需要が高く、多くのテキストが発行されました。英語をはじめとする語学系テキストのほか、趣味や実用、子供の学習など、その種類はさまざま。今回はその中から、特徴的な5冊をピックアップしました。

テキスト1:1935年発刊『基礎英語 春期』

グラフィカルなデザインが特徴的な1935年発刊の『基礎英語』。大胆なフォント使いなど、今見ても斬新です。
目次の対向には、1ページまるまるペンの持ち方のイラストを掲載。本当に「基礎の基礎」から教えていたことがわかります。
一人称の表現を犬に例えた翻訳のページ。「私の主人は私に至極親切です」といった独特の言い回しが特徴的です。

NHK出版から英語テキストの発刊がはじまったのは1932年。そこから現在まで、変わらず高い人気を誇っています。ちなみに今回取り上げた『基礎英語』は、今でも続いている英語学習の定番中の定番シリーズ。現在の英語テキストとの大きな違いは、日本語訳がテキスト内にあまりないこと。当時学習をしていた人々は、ほぼ英語のみで構成されたテキストを片手に、ラジオから流れる講義や翻訳を固唾を呑んで聞いていたのかもしれません。

テキスト2:1937年発刊『速成 佛蘭西語講座 夏期』

当時はフランスを「佛蘭西」と漢字表記していたことがわかる表紙。独特な文字の構成も目を惹きます。
右ページに載っているのはフランス語の発声の仕方。子音によって口をどれくらい開くかを、グラフと丸を使い表現。
単語解説ページは、かな部分がすべてカタカナ表記なのが、時代を感じさせます。「丸々ト肥ツタ」という訳が秀逸!

フランス語をはじめとする語学テキストは、NHK出版からとしては、実は英語テキストよりも先の、1931年から発刊されていました。現在でも多様な言語を扱うNHKテキストですが、そのはしりと言っても過言ではありません。この『佛蘭西語講座』を見てわかるのは、表現方法は違うかもしれませんが、学習方法そのものは大きく変わっていないということ。現代でも通じそうな内容が、90年前から展開されていたのが、不思議な感じがしますね。

テキスト3:1935年発刊『春から夏への婦人・子供服と帽子』

服や帽子の作り方を扱った一冊。チェック柄は今も昔も、お洒落を表すテキスタイルだったことがわかります。
女性のイラストの横には寸法の測り方が書かれています。胸囲の測り方に関しての表現が、なんともストレート。
生地の裁断に関してのページですが、長さに関する表記がものすごく難解な気が……。当時の読者、すごいです。

1930年代のお洒落な女性たちに人気だったであろう『婦人・子供服と帽子』のテキスト。こちらは春から夏にかけての号のため、秋から冬の号もあったと考えられます。現代の「春夏」「秋冬」というファッションの概念も、当時から浸透していたと思うと興味深いですね。長さに関する表記に分数を用いられていることから、ある程度の経験や学識を持った方が読者だったことも想像できます。服飾の本ながら時代考察もできる1冊です。

テキスト4:1935年発刊『昆蟲の科學 魚の科學』

虫と魚を研究したテキスト。これだけでも勉強ができる充実の内容のため、どんな放送をしていたか気になります。
イラストと写真を用いたこちらのページは、「昆蟲と植物」について当時の学者が研究した内容を載せています。
左ページはなんと、ゴキブリの幼虫についての研究結果!当時はゴキブリを「くろばい」と呼んでいたようです。

この『昆蟲の科學 魚の科學』のテキスト。題名からすると子供向けのように感じますが、内容は大人が読んでも学びになることが溢れています。特に気になるのが、写真でも取り上げた「くろばい=ゴキブリの幼虫期の感光度の変化」。ゴキブリそのもののイラストや写真などは出てこないため嫌悪感なく読めますが、なぜこんな研究を当時されていたのか気になるところです……。

テキスト5:1936年発刊『手紙の書き方』

当時、主要な連絡手段だった『手紙の書き方』をまとめたテキスト。味のある筆文字のタイトルが特徴です。
当時の手紙が載っているページ。内容は縁談の断り方でした……。
先ほど同様、こちらも当時の手紙が掲載されたページ。下部には、どのような意味が込められているかの説明が。

連絡手段が増えた現代、手紙を書くことはことさら特別なことになっていますが、1930年代では重要な連絡手段でした。この『手紙の書き方』には、季節の挨拶や縁談の断り方など、かしこまった内容を書くときのマナーがまとめられています。当時の手紙を見てみると、相手が想像する“余白”も残して書く、詩的な文章が主流だったことがわかります(ただ解説には、余白にどんな想いが込められているか事細かに書かれていました……)。

1930年代へのタイムスリップ、いかがでしたでしょうか?
バラエティに富んだテキストたちから、戦前の時代背景がチラッと見えた気がしますね!〈NHKテキストクロニクル〉では、貴重な対談や他の時代のテキストも紹介しています。ぜひご一読ください。

OTHER CHRONICLE

【編集後記】

NHKテキストの90年の歩みがわかるスペシャルサイトをご用意しました。
進化していく勉強のスタイルについて、ぜひご覧ください。
https://www.nhk-book.co.jp/pr/text/chronicle.html

STAFF

  • Text&Edit : Shun Inoue

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