1940年代 戦中&終戦後のNHKテキスト

スペシャル③|NHKテキストクロニクル

NHKによるテキスト発売開始から90年&NHK英語講座を題材にした連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」放送に合わせ、テキストの歴史を振り返る特集〈NHKテキストクロニクル〉がスタート! NHK放送博物館でおこなわれた貴重な対談インタビューや、1930-60年代までの特徴的なテキストを取り上げた企画など、全6回でお届け。

UP DATE | 2021.11.12

第3回は1940年代のテキストをチェック。テキストにも戦争の色が濃くなっていった前半の時代から、戦後GHQが進駐し、英語の価値が変わった後半の時代までを、一挙に振り返ります。

戦争の影響を受けテキストも波乱万丈

ラジオの聴取契約数が500万を超えた1940年。けれども放送に対する統制は、戦争の気運が高まっていくほどに強まり、NHKテキストの内容にも大きな影響を及ぼしました。子供向けテキストにも軍の動向が掲載され、英語学習は“敵性語”とみなされ、太平洋戦争の開戦と共に放送されなくなるように……。

そして終戦を迎え、GHQが日本の間接統治をはじめます。彼らが日本に来たことで英会話の必要性が高まり、1945年から英語講座の放送が復活しました。そして翌1946年、一世を風靡した平川唯一先生の『英語會話』がスタートするのです……。そんな波乱万丈な1940年代を象徴する5冊を集めました。

テキスト1:1940年発刊『子供のテキスト 十二月放送』

焚き火をしている子供をレトロタッチで描いたイラストが映える『子供のテキスト』。
子供向けのテキストのため、誌面には多数のマンガが掲載。吹き出しの文字がすべてカタカナなのも当時ならでは。
可愛らしいイラストが散りばめられた誌面ですが、実は内容の半分が戦争関連。戦争や統制の影響が垣間見えます。

1925年から放送をしている「子供の時間」という番組のテキストだった『子供のテキスト』。太平洋戦争が開戦する1年前、1940年発刊のこちらの号には、マンガや豆知識など子供向けの企画と一緒に、戦争にまつわる話も散見できました。ドイツ軍のエピソードなど、歴史を知る我々からするとビックリな内容も。テキストから、戦争へと向かう足音が聞こえてきます……。

テキスト2:1941年発刊『放送と科學 ラジオ少國民 五月放送』

戦争の影響により『子供のテキスト』が『ラジオ少國民』へと改題。表紙のデザインも大きく変わりました。
左ページは富士山を図解したイラスト、右ページは時代を感じさせる本の紹介と、対照的な内容が並んでいます。

戦争の影響を色濃く受け、『子供のテキスト』は『ラジオ少國民』へと名前を改題しました。戦時体制が進むにつれ、小学校は国民学校と改称され、学童が少国民と呼ばれるようになったことに由来します。もちろん番組やテキストにも、大きな影響が。子どもたちの愛国心を駆り立たせ、兵隊へのあこがれや国のために働くことを教育する内容が中心となりました。まさに戦時下を表すテキストだったと言えます。

テキスト3:1945年発刊『實用英語會話 第一講』

戦後発刊された中でも最も古いテキストのひとつ、『實用英語會話』。英会話の必要性が高まったことが背景に。
ページ内の例文に、進駐軍=GHQにまつわる話があるなど、戦後の状況下ですぐ使える内容が詰まっています。

戦時中は敵性語とされてきた英語ですが、戦後のGHQの進駐で、必要性が高まります。そして、終戦からわずか1ヶ月後の1945年9月に発刊された『日米英会話手帳』は360万部を売り上げるベストセラーに(※NHK出版の本ではありません)。ラジオでも『實用英語會話』を開講し、テキストも発刊。実用と名が付くだけあり、すぐに使える例文が数多く掲載された1冊となっていました。

テキスト4:1946年発刊『英語會話 No.3』

大ブームとなった平川唯一先生による『英語會話』。戦後間もないこともあり、造本は非常にシンプルです。
当時の日本人家族の日常会話が、例文の題材になっています。GHQの軍用車についてなど、解説も現実的なものが多くみられます。
平川先生の講座は非常に人気が高く、NHK出版以外からも様々なテキストが発売されました。その一部がこちら。

1946年2月に始まった『英語會話』。月~土の午後6時からの15分番組は、一大ブームを巻き起こしたようです。内容もさることながら、テーマ曲も人びとの心を鷲掴みに。童謡「証城寺の狸囃子」のメロディに「カム・カム・エブリバディ」というオリジナルの歌詞をつけた曲は、誰もが歌えるほどの愛唱歌になったのです。また講師の平川唯一先生による巧みな話術や、日本人家族の日常会話を題材にしたユーモアな例文も評判で、テキストの発行部数は月20~30万部に達し、入手するのも困難だったと言われています。

ちなみに連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」のタイトルは、平川先生の『英語會話』のテーマ曲から名付けられました。

テキスト5:1949年発刊『基礎英語 1月用』

現在も続いている人気シリーズの『基礎英語』。1950年代間近になると表紙もカラーが用いられるように。
戦後間もなくは文字だけの構成が多かったですが、この本ではイラストを使い、コミカルに例文を説明しています。
この号で特筆すべきは別紙の付録が付いていること。「基礎英語通信」と名付けられたタブロイドのような誌面です。

戦後すぐに開講した『實用英語會話』と同じ時期にはじまった『基礎英語』。1949年、戦後4年経った頃のテキストを見ると、誌面からも変化が見てとれます。表紙にカラーが用いられたり、文字のみの構成が大多数だった誌面内にイラストが使用されたり、紙の供給に余裕が出てきたのか別紙の付録が付いていたり……。レイアウトも限りになく現代の形に近いものへと進化していました。

1940年代へのタイムスリップ、いかがでしたでしょうか?
戦中から戦後への時代の転換が、当時のテキストからも読み取れたのではないでしょうか。〈NHKテキストクロニクル〉では、貴重な対談や他の時代のテキストも紹介しています。ぜひご一読ください。

OTHER CHRONICLE

【編集後記】

NHKテキストの90年の歩みがわかるスペシャルサイトをご用意しました。
進化していく勉強のスタイルについて、ぜひご覧ください。
https://www.nhk-book.co.jp/pr/text/chronicle.html

STAFF

  • Text&Edit : Shun Inoue

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