1950-60年代 語学テキストの多様化

スペシャル⑤|NHKテキストクロニクル

NHK出版によるテキスト発売開始から90年&NHK英語講座を題材にした連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」放送に合わせ、テキストの歴史を振り返る特集〈NHKテキストクロニクル〉がスタート! NHK放送博物館でおこなわれた貴重な対談インタビューや、1930-60年代までの特徴的なテキストを取り上げた企画など、全6回でお届け。

UP DATE | 2021.12.03

第5回は、戦後復興期から高度経済成長期までの、1950-60年代に発行された語学テキストを取り上げます。経済成長と共に、語学学習には多彩な番組が生まれました。またテレビの登場で、学習スタイルも大きく進化を遂げたのです。

時代の発展と共に語学テキストも

1950年から1954年にかけ、戦後復興期に入った日本。平均給与が戦前の最高水準を超え、1955年より高度経済成長期へ突入します。テレビが登場したのもこの頃です。1953年の2月にNHKが日本初のテレビ本放送を開始。1964年の東京オリンピック開催時には、テレビの世帯普及率は90%に達しました。

経済の成長と新しいメディアの確立によって、NHKテキストも大きく進化を遂げていきます。需要が高まった語学は、さまざまな番組が誕生。従来のラジオの英語番組だけでも多岐にわたり、テレビを使った番組や高校生に特化した番組、英語以外の言語も幅広く網羅。まさに語学テキスト発展の時代といえます。今回はそのトピックが分かるテキストを集めてみました。

テキスト1:1967年発刊『RADIO ENGLISH CLASS BOOK 1』

まずはラジオ講座の英語テキストをご紹介。こちらは中学生向けの内容を扱った『RADIO ENGLISH CLASS』。
親近感が湧くイラストや子供向けの歌を載せるなど、英語に不慣れな中学生でも学習しやすい内容になっています。

1950-60年代に発刊されていたラジオ講座の英語テキスト揃えてみました。上段が1950年代に発行されていたもので、左から『ラジオ英語会話』(1951年)、『基礎英語』(1955年)と、50年代はまだ定番の講座が多かったようです。

下段は1960年代のもので、講座や学習スタイルが充実していったことがわかります。左から、基礎英語の次のステップとして開講された『続基礎英語』(1965年)、レコードプレーヤーの普及に伴い講座内容を録音したソノシートが付いてくる『基礎英語ソノテキスト』(1966年)、そして冒頭で紹介した中学生向け講座『RADIO ENGLISH CLASS』(1967年)。ラジオだけに着目してみても、講座の選択肢や学習の自由度が増していったことがわかります。

テキスト2:1960年発刊『テレビ英会話 6月号』

テレビが一般家庭に普及したことで、英語講座にもテレビ化の波が。こちらは傘を使ったイラストが象徴的な1冊。
世界中で聴かれるNHKラジオ、という説明を写真付きで紹介。

一般家庭にテレビが普及したことで、語学講座もテレビでの番組制作がはじまります。最も古いテキストが、いちばん左の『英語会話』(1959年)。スタートした当初はテレビの表記が控えめでしたが、翌年の1960年のテキストには『テレビ英会話』と番組名に“テレビ”が冠されるように(上で紹介したもの)。

1963年のテキストを見てみると、『やさしいドイツ語』というテレビ番組がはじまっており、英語以外にもテレビ講座が広がっていったことがわかります。1964年には『テレビ英会話 初級』がスタート。レベルに合わせた学習がテレビでも出来るように……。ラジオでの語学学習だけの時代から、ライフスタイルの変化に合わせて、語学の学び方も多様化していったのです。

テキスト3:1963年発刊『英語実力養成シリーズ 春の号』

1950-60年代にかけて高まった高校進学率。それに合わせて、NHKテキストでは高校生向けの英語講座を開講。
アメリカ人がよく使う「Hi」を、その国民性と共に説明しています。文化も学ぶ、講座の特徴が出ています。

1950年の高校進学率(男女合計)は42.5%でしたが、1960年には57.7%、1965年には70.7%、1969年には79.4%と、1950-60年代で高校進学者が一気に増えました。この世相に合わせて、高校生向けの講座も開講。いちばん左の『高等学校講座 初級用』は1958年発刊。英語、数学、国語をまとめて学習ができたのです。

1961年発刊の『高校上級』になると、さらに多くの教科を網羅。おそらく大学受験生向けのものだったのでしょう。需要の高まりを受け、翌1962年からは『英語(Ⅱ)』など教科を細分化。そして冒頭で紹介した『英語実力養成シリーズ』(1963年)のような高度な語学講座も誕生するなど、常に時代を反映していきました。

テキスト4:1954年発刊『中国語入門講座 12・1月用』

英語以外の語学にも焦点を当てていきます。中国との国交正常化前の1954年のテキストです。
不思議な音符のような記号が並びますが、中国語の発音を表したページ。この学習方法は現在でも用いられています。

戦後の日本において、英語学習は高い人気がありましたが、その他の言語についてはどうだったのか……。NHKテキストと共に追いかけていきます。

日本人の海外渡航の自由化=自由に海外旅行に行けるようになったのは、1964年からです。それまでの旅行は日本国内が主のため、現在のような「観光のために現地の言葉をおぼえる」需要は、ほとんどなかったと考えられます。

ですが、今回揃えた6つのテキストを見ると、『ロシヤ語入門講座』(1958年)、『スペイン語入門講座』(1961年)、『中国語入門講座』(1954年)、『ふらんす語 中級』(1957年)、『イタリア語入門講座』(1960年)、『ドイツ語 初級』(1959年)、と1964年より前に多くの講座が揃っていたことがわかります。仕事や教養として身につけたい人のほか、大学では1950年代から第二外国語の学習があったため、多くの学生たちが学んでいたのかもしれませんね。

テキスト5:1958年発刊『国語講座 8・9月号』

最後に紹介するのは他の語学テキストとは毛色の違う『国語講座』。日本語について学ぶことができる一冊です。
内容は「共通語のアクセントを身につける法」や「名詞のアクセント」など、わかりやすい発音のいろはを掲載。
左ページは「方言の旅」という企画名で、九州地方の方言の特質がまとめられていました。今でも勉強になりそう。

語学テキストのラストを飾るのは、日本語にスポットをあてた1958年刊行の『国語講座』です。共通語やアクセント、方言についてなど、その内容はまさに“日本語テキスト”。ちなみに共通語とは色々な捉え方がありますが、分かりやすく解釈すると「方言の違いをこえて互いに通じ合うことば」を指します。戦後からまだ10数年しか経ておらず、おそらく共通語の意識を浸透させる必要があったのでは……。まさに時代に寄り添ったテキストと言えるのではないでしょうか。

1950-60年代の語学テキストの遍歴は、いかがでしたでしょうか?
時代と共に、語学テキストも発展・多様化していくのが見えてきた気がしますね。〈NHKテキストクロニクル〉では、貴重な対談や他の時代のテキストも紹介しています。ぜひご一読ください。

OTHER CHRONICLE

【編集後記】

NHKテキストの90年の歩みがわかるスペシャルサイトをご用意しました。
進化していく勉強のスタイルについて、ぜひご覧ください。
https://www.nhk-book.co.jp/pr/text/chronicle.html

STAFF

  • Text&Edit : Shun Inoue

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