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概要

『護られなかった者たちへ』待望の続編! 東日本大震災によって引かれたさまざまな“境界線”が導く真実とは? 著者渾身の社会派ミステリー小説。

21能力は常に後手に回る。ようやく警察にノウハウが蓄積されたと思えば、相手は更に新しい技術を導入してくる。最初から追う側の不利を前提とするイタチごっこだった。現に3Dプリンターのメーカーも種類も市場に溢れているのに、科捜研ではプリンター毎の特定法が未だ確立していないという。だから件の免許証が3Dプリンターで作られていることは分かってもエンドユーザーまで辿るのが困難になっている。「住所・氏名を偽っているくらいですから可能性は低いんですが、やはり行方不明者届の中にも該当者は見当たりません。歯型で特定できないか警察歯科医にも資料を回しているんですが、こちらも反応がありません」「自殺当日の彼女の足取りから何か?つ かめないか」「地元の人間ではなさそうですし、タクシー会社や気仙沼駅の駅員に地取りをかけていますが現時点で彼女の目撃情報は得られていません」 つまりはないない尽くしということだ。それなら自分が思っていることを口にしても邪険にはされないだろう。「素朴な疑問がある」「聞きましょう」「どんな事情かはともかく、服毒自殺しようとする女がどうして海岸なんかを選んだと思う。普通なら自宅かホテルの一室を選ぶんじゃないのか。いくら深夜でも、海岸じゃ誰が立ち寄るかも分からない。その点、部屋の中なら邪魔者は入らない」「たまたまホームレスに近い状況だったんじゃないですか」