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概要

『護られなかった者たちへ』待望の続編! 東日本大震災によって引かれたさまざまな“境界線”が導く真実とは? 著者渾身の社会派ミステリー小説。

11『例の自殺した女の件で市民から通報がありました。ひょっとしたら店で働いている女の子じゃないかって』 南町での訊き込みもスマートフォンも、一瞬で思考から飛んだ。「本当か」『通報は今しがたです。これから通報先に向かうところなんですが、笘篠さんに一報入れておこうと思いまして』「俺も合流する」 横にいる蓮田の存在は頭になく、咄嗟に口をついて出た。「場所を教えてくれ」『気仙沼市内ですよ』 一ノ瀬が告げる住所を頭に叩き込み、肝心なことを訊いていないのに気づく。「何の店に勤めていたんだ」『デリヘルです』 その答えもまた笘篠の心を?き乱す。通話を切ると、蓮田が話し掛けてきた。「今回の笘篠さんは異例づくしですね」「悪いが最寄りの駅で下ろしてくれ。課長には俺から後で報告しておく」「気仙沼署に合流するんですよね。電車を乗り継いでいっても間に合わんでしょ。現場までお伴しますよ」