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概要

『護られなかった者たちへ』待望の続編! 東日本大震災によって引かれたさまざまな“境界線”が導く真実とは? 著者渾身の社会派ミステリー小説。

27とも思わなかったんです。どうせ次の機会はない訳だから」 風俗嬢の立場を理解しながらも、評価は冷徹に下す。これが常連というものかと、笘篠は鼻白む思いだった。「思い詰めた様子はなかったですか」「全然ですね。プレイ……接客も事務的じゃなかったし、それなりに演技もしてくれたし、切羽詰まったような雰囲気じゃありませんでした」 不明女性がドラッグストアに飛び込んだのは二人目の接客を終えた直後だ。荻野の心証は信用してもいいだろう。 荻野宅を出た二人は無言のまま覆面パトカーに向かう。不用意に口を開けば、お互い不愉快な思いをさせそうだった。 車内に身体を滑り込ませると、二人はどちらからともなく鼻を鳴らした。「嫌な話でしたね」「ああ。嫌な話だった」 嫌な話だが記憶の抽ひ き斗だしに仕舞い込む。不明女性の素性が特定できない今は、どんな些さ細さいなことでも拾い集めるつもりだった。「最後の客になった山田某の方はどうなった」「ホテルイン気仙沼に照会を掛けましたが、こちらは偽名でした。住所地と氏名は架空のものです」「宿泊者名簿に架空の名前を書いたか」