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概要

『護られなかった者たちへ』待望の続編! 東日本大震災によって引かれたさまざまな“境界線”が導く真実とは? 著者渾身の社会派ミステリー小説。

1二 残された者と消えた者1 一ノ瀬から連絡がきたのは一週間後のことだった。『使用者、判明しましたよ』 ホテルイン気仙沼で奈津美の名前を騙った風俗嬢と会った山田某は誰なのか。たった一つの手掛かりは宿泊者名簿に記入されていた携帯端末番号だが、捜査担当者でない笘篠では通信事業社に問い合わせて契約者情報を得ることが叶わなかった。「手間をとらせてすまなかった」『ここから先は関与できません』 電話の向こう側で一ノ瀬は苦笑交じりに話す。『使用者の氏名と住所を口頭で教えますから、後は笘篠さんに丸投げします』 気仙沼署が自殺と処理した以上、一ノ瀬が継続捜査をすれば何かと波風が立つ。一方、笘篠も気仙沼署のひも付きでは自由に行動できない。一ノ瀬が丸投げを宣言したのはむしろ親切心から