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概要

『護られなかった者たちへ』待望の続編! 東日本大震災によって引かれたさまざまな“境界線”が導く真実とは? 著者渾身の社会派ミステリー小説。

19 凄惨な有様だが、欠損箇所を考えれば犯人の意図は明らかだった。「口蓋部分の破壊は歯型を判別不能にするため、十指の切断は指紋照合を防ぐためですか」「頷きたい気持ちは山々なのですが、どうやらそうとも言い切れない。男の持っていた札入れには社員証と運転免許証が入っていましてね。鼻から上ですが、死体は免許証の持ち主だと特定できそうなんですよ」 唐沢から訊くだけ訊くと、二人はテントの外に出た。早速、最前話していた南署の捜査員を捕まえる。捜査員は来くる宮み やと名乗った。「あんなご面相になっても、何とか免許証の本人であることは分かるんですよ」 来宮はビニール袋に収められた運転免許証と社員証を二人の目の前に掲げる。氏名 天あま野の明あき彦ひこ 昭和46年10月3日生住所 岩手県上かみ閉へ伊い郡大おお槌つち町ちょう赤あか浜はま〇―〇 離れた住所に疑念が湧いたので裏返してみると、備考欄に変更後の住所が記載されている。こちらは仙台市若わか林ばやし区上かみ飯いい田だ となっている。 次いで社員証を見る。〈氷ひ室むろ冷蔵〉社員 天野明彦