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概要

『護られなかった者たちへ』待望の続編! 東日本大震災によって引かれたさまざまな“境界線”が導く真実とは? 著者渾身の社会派ミステリー小説。

18 一 生者と死者「現状は、現場周辺での地取りを徹底。被害男性の人間関係を把握するため、鑑識の分析結果を待って身元特定を急ぐ。被害男性の顔写真を公開し、広く情報を募る。また住民票の偽造に関しては現物を入手し、作成元を追及する。以上」 初動段階での捜査方針としては妥当なところだろう。特に反論も質問もなく、捜査員たちは三々五々と散っていく。 東雲にいいように操られた感が胸の底に残る。何やら異物を飲み込んだような気分でいると、背後から蓮田が歩み寄ってきた。「さっきはちょっと、ひやひやしました」「何がだ」「正面切って管理官に意見していたじゃないですか」「あれは意見じゃない。具申だ」「どちらにしても、笘篠さんが管理官に?みついている図はあまりいただけません」 蓮田はそれ以上言及しなかったが、笘篠の私憤による暴走を怖れているのは明らかだった。4 捜査方針を受け、早速天野明彦を名乗っていた男の顔写真が全国に公開された。不正な手段で運転免許証を取得していた事情は伏せ、名無しの被害者として情報を求めるとその日のうちに百件を超える問い合わせがあった。南署の捜査員がそれぞれ確認に走ったが、二日経った時点でま