ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play

概要

『護られなかった者たちへ』待望の続編! 東日本大震災によって引かれたさまざまな“境界線”が導く真実とは? 著者渾身の社会派ミステリー小説。

25ータベースにはヒットしなかった。後は被害男性の部屋を再度家宅捜索して、更なる試料を採取するしかない。鑑識にすれば面目を潰されるような話だが、管理官の指示なら従わざるを得ない」 畳み掛けると自己嫌悪を覚えたが口の重い男には有効だ。案の定、両角は億劫そうに口を開いた。「俺たちもあんたと同じく宮仕えの身だからな。本部の方針には従うし、鑑識の名にかけてブツの一つでも咥くわえて帰らなきゃ士気に関わる」「鑑識には両角さんのように経験値の高い人材が揃っている。まさかダメ元で再臨場するはずもない。何かしらの勝算があってのことですよね」「今ここで喋れっていうのか」「捜一は無関係ではないのでしょう」 揚げ足を取るのも笘篠の流儀からは外れるが、これくらいは許容範囲だろう。自分の暴走に歯止めを掛けようとしている蓮田も今は二人のやり取りを見守っている。「……被害男性は指先に瞬間接着剤を塗布して、徹底的に指紋を隠そうとしている。功を奏して部屋からは指紋が一つも採取できていない。しかし本人が見逃したかどうか盲点も存在する」「使用後に?がした接着剤の被膜ですね」「その通り。被膜の裏側にはこれ以上ないほど克明な指紋が残っている。浴室に接着剤の容器が置いてあったところから、被膜の貼り替えはあそこで日常的に行われていたと考えるべきだ。言い換えれば、?がされた被膜も浴室で流された可能性が高い」「排水管浚いですか」