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概要

『護られなかった者たちへ』待望の続編! 東日本大震災によって引かれたさまざまな“境界線”が導く真実とは? 著者渾身の社会派ミステリー小説。

11ています。真希一人にできる仕事じゃありません」「要領の悪い者には尚更不向きか」 久谷は静かに憤っているようだった。「何か思い出したら、必ず連絡を差し上げる」 久谷宅を辞去した笘篠と蓮田はプリウスを大崎市へと向けた。真希が実家と没交渉になっているというのはあくまでも宮城刑務所経由の情報だ。直接、家族に話を訊かなければ信憑性に欠ける。「でも笘篠さん。たかが窃盗で捕まった程度で面会にすら来なくなった家族ですよ。コンビニ強盗で縁を切ったというのも理解できない話じゃないですよ」「それでも出所したら連絡を取ろうとするかもしれない。とにかく出所後の真希がどこかに接触を試みていたのは事実だ。関係者を片っ端から当たるより仕方がない。それに、家族には本人の死亡を伝えなきゃならない」 大崎市三さん本ぼん木ぎ 地区は津波被害よりも震動による被害が顕著な場所だった。総合支所庁舎のような大型施設は吹き抜けの天井が広範囲に亘って崩落し、市道は至るところで罅ひび割れ、陥没した。現在、震災の爪痕は目立たなくなっているが、罅が補修されないままのブロック塀や廃墟と化した店舗が残骸を晒している。 真希の実家も震災被害の痕が刻まれていた。壁には亀裂が走り、雨樋が途中でひしゃげている。震災から八年が経過したにも拘わらず補修がされていない事実で、真希家の台所事情が透け