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概要

『護られなかった者たちへ』待望の続編! 東日本大震災によって引かれたさまざまな“境界線”が導く真実とは? 著者渾身の社会派ミステリー小説。

13 富沢公園で死体が発見された後、顔写真は公開している。本人の家族なら捜査本部に一報があって然るべきなのに、それもなかった。今まで理由が不明だったが、居間に通されてやっと合点がいった。 テレビもパソコンも見当たらなかったのだ。 代わりに目についたのは、真希の父親と思しき老人の遺影だった。天井近くの壁に掲げられ、こちらを睥へい睨げいしている。「竜弥が死んだというのは本当ですか」 菜穂子から問い掛けられ、笘篠は免許証の写真を取り出した。「免許証に記載された氏名・住所は無視してください」「ああ、ああ、ああ」 写真を取った菜穂子はうわ言のような声を洩らしながら腰を落としていく。「……た、竜弥に間違いありません」「テレビが見当たりませんが」「竜弥がコンビニ強盗をした時、処分したんです。毎日のようにニュースで竜弥の名前を連呼されるのが嫌で嫌で」「テレビがないと、また震災が発生した時に困るんじゃないですか」「今はスマホで地震速報とかあるので……」「それにしてもテレビごと処分するというのもよほどのことだと思います」「処分しろと言ったのは主人なんです」