ブックタイトル中山七里「境界線」
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『護られなかった者たちへ』待望の続編! 東日本大震災によって引かれたさまざまな“境界線”が導く真実とは? 著者渾身の社会派ミステリー小説。
16 三 売る者と買う者 やがて菜穂子はゆっくりと顔を上げた。「竜弥は公園で見つかったと言いましたね。自殺なんですか」「いいえ」「殺されたんですね」 富沢公園で発見された男が他殺であるのは既に報道されている。ここで隠しておく必要もなく、実の母親には告げておくべきだろう。「すぐには素性が分からないよう、身体の一部が損壊されています」「亡骸は今どこにあるんですか」「南署の霊安室に安置されています」「会わせてください、今すぐ」 菜穂子は床に座り込んだまま低頭する。「お願いします、お願いします」 身も世もなく乱れる様を見ていると、さすがに哀れさが募る。笘篠は菜穂子の肩に手を置いて落ち着かせるのが精一杯だった。 見かねた様子で蓮田が割って入る。「お母さん以外、誰も息子さんを弔ってくれる人はいません」「あ……」「息子さんであると確認していただいたら、然る後死体検案書とともにご遺体を引き渡します。市役所に死体検案書を提出すれば火葬許可証が発行されます」