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概要

『護られなかった者たちへ』待望の続編! 東日本大震災によって引かれたさまざまな“境界線”が導く真実とは? 著者渾身の社会派ミステリー小説。

18 三 売る者と買う者らなかった。ありつけたのは身分証明書を必要としない仕事だけだった」 過去から逃れようと足あ?がいた者たちが、結局は追い詰められて命を落とした。皮肉と言えば皮肉な話だ。「二人の共通点は、本来の名前では生きていけなかったことだ。本人に前科があるか、あるいは親族に前科者がいる。そういう境遇の者たちに、行方不明者の個人情報を売り渡したヤツが存在している」「真希竜弥を殺害した犯人もそいつなんですかね」「可能性は小さくない。いずれにしても俺たちが追うべきは、個人情報の売人だ」「しかし鬼河内珠美も真希竜弥も死んでいます。二人以外にも新しい名前で生活している者がいたとしたら、まず自ら名乗り出ることはないでしょう」「下流でなくて上流を当たってみる」「何か当てがありそうですね」 笘篠は返事を濁したが、真希が出所者であるのを鑑みれば捜査範囲はたちまち狭められる。 受刑者同士の世界はそれほどに狭小なものだった。2 真希竜弥の素性が明らかになると、俄然捜査本部は色めき立った。被害者が名無しではまともに鑑取りもできないが、前科者なら交友関係は自ずと絞られてくる。この辺りの見立ては笘篠と