ブックタイトル中山七里「境界線」
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『護られなかった者たちへ』待望の続編! 東日本大震災によって引かれたさまざまな“境界線”が導く真実とは? 著者渾身の社会派ミステリー小説。
25「それにしたって」「刑務所は規律が全てだ。受刑者たちが徒党を組んだり、出所後の悪巧みをしているなんていち刑務官が大っぴらに認める訳にはいかないだろう。東良刑務官の素っ気ない態度も、胸に手を当てれば警察にだって似たような輩がいる。帰属意識が高い人間は、どうしても外面が鉄仮面みたいになるさ」 ハンドルを握る蓮田は拗ねたように唇を曲げる。案外子どもっぽいところがあるのだと微笑ましくなる。「笘篠さんは達観しているんですよ」「意外だな。俺の暴走を阻止しようとしているように見えたんだが」 逸はやる気持ちが霧消した訳ではない。だが鬼河内珠美と真希竜弥の事情を知ってからは彼らへの同情が芽生えている。「あんな事務的な対応されて落ち着いているのは、ひょっとして笘篠さん、何か?んだんですか」「一人だけ心当たりがある。宮城刑務所に服役中、受刑者たちの信望を集めながらシャバに出てからの裏ビジネスをずっと考えていた男だ」 多た賀が城じょう市中ちゅう央おう三丁目、雑居ビルの一室に男の根城があった。一度訪れた場所なので、笘篠は一切迷わなかった。 小汚いビルのかび臭いフロアのせいで、ドアに掲げられた〈エンパイア・リサーチ〉の金看板が尚更安っぽく映る。