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概要

『護られなかった者たちへ』待望の続編! 東日本大震災によって引かれたさまざまな“境界線”が導く真実とは? 著者渾身の社会派ミステリー小説。

29飯前だと考えたんですね。ふーん。震災から七年経っても、未だに失踪宣告されていない行方不明者がいるって話ですからね。彼らの個人情報を元に住民票を偽造すれば、親族が何らかの手続きをしない限り、不正使用がバレる心配もない。なるほど、なかなかいい着眼点ですね。昨今、本名で生きていけない人間は増加の一途を辿っているし、3Dプリンターやら何やらの技術革新で偽造技術も日進月歩。ビジネスチャンスも小さかない」 歌うように喋ったかと思うと、五代は不意に肩を竦めてみせた。「しかし後発組にはあまり旨みがない。もっともどんな商売だって同じですがね」「どういう意味だ」「口で言うより現物を見た方が早いかな。スマホをお持ちなら〈代書屋 値段表 偽造〉で検索してみてくださいな」 隣で話を聞いていた蓮田が早速端末を操作する。表示された一つを開いてみると、こんな一覧表が出現した。『・戸籍謄本(実在名義の本物)30万円 ・卒業証明書10万円 ・成績証明書10万円 ・パスポート50万円 ・住民票10万円 ・印鑑証明10万円