ブックタイトルNHK出版|WEBマガジン|太陽の末裔
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恩田陸「太陽の末裔」:変死体、建築家の日誌、行方不明の留学生の手記。日本と南米をつなぎ、古代インカ・マヤ文明の謎と人類の未来を描く、恩田陸待望の長編伝奇小説!
11太陽の末裔 ベテラン職員は、困惑した顔だった。「はい」とカメラを構えていた別の職員が頷く。「じゃあ、掘り出すしかないだろうな││それにしても、いったい、どうやって運び込んだんだ、これ」 つかのま、そこにいた三人が棒立ちになり、部屋の中を見つめた。 電灯が揺れているが、その真ん中に下がった点灯のための紐は、部屋の中の大部分を占めるものの上に載っていた。 砂。 大量の砂が、部屋を占めていた。 六畳一間の天井近くまで、大量の白っぽい砂で埋まっているのだ。 ひとつだけある窓は、カーテンレールぎりぎりまで砂が迫っているのでよく分からないが、雨戸が閉まっているらしい。 彼らが立っているのは部屋の入口の前、流しのある板の間である。 家具は見えない。大量の砂は、部屋の入口に向かって急な坂になっていて、板の間にも砂が流れ出していた。第一発見者が、部屋の入口の、曇りガラスの入った引き戸を開けたところ、どっと流れ出してきたのだという。 そして、その中に、ひからびた腕を見つけて、泡を喰って一一〇番通報してきたというわけなのだ。 尋常な量の砂ではない。相当な重さだろう。そのせいで、床が抜け、部屋全体が傾いでし