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概要

恩田陸「太陽の末裔」:変死体、建築家の日誌、行方不明の留学生の手記。日本と南米をつなぎ、古代インカ・マヤ文明の謎と人類の未来を描く、恩田陸待望の長編伝奇小説!

13 またしても、何か間違って聞き取ったのかと思い、私は受話器に耳を押し付けて聞き返した。今、啓示って言ったの? ジョアナは、自分がそう呟いていたことを意識していなかった様子で、「あら」と意外そうな声を出した。 あたしったら、変なこと思い出しちゃって。 ジョアナが、またあの中途半端な笑みを浮かべているのが分かった。 おばあちゃんに聞いたことがあったの。神様が、私たちに啓示を与える時には、ものすごい風が吹くんだって。 啓示を与える時に? 私は戸惑って、もう一度聞き返した。 あの時、すごい風が吹いたって言ったでしょ。 ジョアナはどこか上の空で続けた。 もしかして、菜穂子は神様の声を聞いて、連れてかれたんじゃないかって思う時があるの。 あまりに不可解な状況で親しい友人を失ったジョアナが、なんらかの説明を求めているのはよく分かった。何かの理由を見つけて、納得したい気持ちは私も同じだった。 しかし、「啓示」とは。 ジョアナはヒスパニック系なので、おそらく祖父母はカトリックなのだろう。だからそんな連想をしたのに違いない。しかし、菜穂子はクリスチャンではないし、ジョアナならとも