tomorou001

NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 2/16

電子ブックを開く

このページは tomorou001 の電子ブックに掲載されている2ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

いるわけではないから、言ってみれば“普通”である。いつも銀縁のメガネをかけているけれど、「メガネ男子」という言葉がある今ではそれも特別な特徴ではないだろう。体型も中肉中背、声の感じも高くもなく低くもなく、どこから見ても〝普通〟という表現が、しっくりくる──トモローは、そんな男だ。もし少しだけ、いわゆる“普通”から外れた部分があるとすれば、それは彼が主夫であるということだ。もちろん〝普通の主婦〟という言葉がある以上、〝普通の主夫〟という言葉があっても、何もおかしくないが、そうそう世間は進歩的でもない。女性に男社会で働く苦労があるように、男が家庭に入って育児するのにも、それなりの苦労があるものだ。その苦労とやらを、友に代わって書き留めておこうと思う。だから、これは『主夫のトモロー』の物語。1今から少し昔、平成の世が始まったばかりの春先のこと。人生、一寸先は闇──しょせん予定は未定の毎日だから、どんな想定外のことが起こっても、何の不思議もない。世界が自分の思いどおりに動いてはくれないことなど、すでに子供の頃から知っていたトモローだが、突然の人生大転換には、さすがに驚いた。