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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 5/16

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概要:
朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

支えられていたからであり、業界ではいわゆる玄人好みの雑誌として、それなりの支持を集めていた。社員は編集担当が五人、営業担当六人、経理のおばさんが一人と、どちらかといえば、こじんまりとした会社である。トモローは新卒で入社して、ようやく三年目に突入した編集担当の下っ端社員だ。「とにかく、行ってみましょう」トモローは編集担当の先輩たちと、隣の会議室に移動した。会社は銀座一丁目にあったが、むろん自社ビルではなく、古ぼけたビルの三階の一角を借りていた。部屋は三つあって、L字型の大きなスペースを編集と営業で分かち合って使い、その端に薄い壁で仕切られた社長室があり、また別に八畳程度の広さの会議室がある。もちろん会議室というのは便宜上つけられた名前で、場合によっては応接室にも写真撮影のスタジオにもなり、泊まり込んで仕事する時は仮眠室にもなる。ふだんは長い会議用のテーブル二つに折りたたみのパイプ椅子、さらに壁際にバックナンバーの束が積み上げられているだけの、殺風景なスペースだ。トモローたちが会議室に入ると、ホワイトボードの前に営業部長の木きの下したが立っていた。ただでさえ仏頂面が地になっている人だが、今日はそれを通り越して、平家蟹の甲羅に浮かんだ怨霊を思わせる顔つきになっている。何か激烈にまずいものでも食べたのだろうか。「みんな、適当に座ってくれ」