tomorou001

NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 7/16

電子ブックを開く

このページは tomorou001 の電子ブックに掲載されている7ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

「つまり倒産ってことですか」社員たちが口々に言葉を投げかけ、木下はそれをすべて受け止めるように、広げた両掌を前に突き出しながら答えた。「倒産ではなく、あくまで整理です」それから木下は事情を説明したが、トモローには今一つ理解できなかった。話が急すぎて、それが自分の身に降りかかったことだという認識が、なかなかできなかったのだ。「岡田さん、つまり、これってどういうことなんですか」話が一段落したところで、トモローは隣で放心している岡田に尋ねた。「斉藤くんは、相変わらず鈍いなぁ……つまり、いきなり会社終了ってことだよ」「会社終了って……つまり、この会社を畳むっていうことですか」「まあ、そういう言い方もできるね」「じゃあ、今編集してる来月号はどうなるんです?」「全部中止だってさ。来月号は、もう出さないってこと」「そんな……あんまりですよ」その時のトモローの頭に浮かんだのは、すでに苦労して仕上げていた記事や、必ず紹介すると約束した個展や美術展はどうなるのか……ということだった。「それどころじゃないだろう? 早い話、ここにいる全員がクビになったのと同じだよ。来月から、どうするんだい」