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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 8/16

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

思わず呟いたトモローに、岡田が呆れたように言った。「あ、そうですよね……って、クビなんですかぁ? 俺」「だから、キミだけじゃなくって、ここにいる全員だってば」要点をまとめた岡田の話によると、親会社である美﨑商会の業績が急激に悪化して、ある程度の整理をしなければ倒産確実になったのだという。その整理対象に真っ先に選ばれたのが、創業社長が趣味で作ったような、この会社だった……というわけだ。「あんまり急すぎますよ。せめて、前もって言ってくれていたら」編集部に戻ってきたトモローは岡田に言った。まだ何人もの社員は会議室で木下たちに抗議しているようだが、今騒いだところで、発表された以上の話は出てこないだろう。「まぁ、この会社が毎年バッチリ黒字だったって言うんなら、いきなり、こういう話にはならないんだろうけど……最近は購読者が減ってたし、写植や製版の経費が上がっちゃって、一冊作るたびに赤が出ていたからな」そう言いながら岡田は、昼過ぎから取りかかっていた特集記事の原稿を二つに引き裂いて、ゴミ箱に投げ捨てた。「ちょっと、岡田さん!」「何だい、まだキミはわかってないのか? 来月号は、もう出ないんだよ。こんな原稿は、もう使わないんだ」それはわかっているけれど、自分なら今し方まで格闘していたものを、すぐに捨てる気に