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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 11/16

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

11「ミッちゃんはよくても、俺が怒られるよ」美智子の両親は、とにかく娘を溺愛していた。一人娘だから仕方ないのかもしれないが、今でも美智子を子供扱いしていて、二十代後半にさしかかった娘を「みったん」と呼んでいるくらいだ。さすがにトモローの前では控えているが、何かの折、お父さんが腑抜けた声でそう呼んでいるのを、何度か耳にしたことがある。「それにさ……俺はよく知らないんだけど、結婚式って、そんな簡単にできるものなの? 式場を予約したり、いろいろ準備したりするものなんでしょ。今から始めて、おじいちゃんの、その……何ていうか、ほら」「死ぬまでに間に合うのかって言いたいんでしょ。そんなところで、余計な気を回さなくっていいよ」美智子は意外にデリカシーがない。「そのへんのことは大丈夫だよ。そりゃあ、ホテルだの結婚式場だので大々的にやろうと思ったら、時間もお金もかかるだろうけど……小さい会場で身内だけ集めてやるんなら、どっちもそんなにかかんないわ。特におばさんが千葉でレストランやってるから、そこを使えば安上がりよ」「なるほどね」外堀が次第に埋められていくような気分になりながら、トモローは尋ねた。 「俺はいいけど、ミッちゃんは、それでいいの? やっぱり女の人にとって、結婚式は一世