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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 13/16

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

13美智子は再びチキンソテーを食べ始めながら言った。「まぁ、そういうことになるかな。事情が事情だし」やっぱり人間として、美智子のおじいちゃんの希望は叶えてやらなくてはなるまい。もちろん美智子と結婚したくないわけでは断じてないし、いつかはするだろうとは思っていたから、異論はない。「じゃあ、ちゃんとやってもらわないと困るわね」「やるって……なにを?」「プロポーズに決まってるでしょ。そういうことは普通、男の方からするもんじゃないの?」「いや、結婚しようって先に言ったのは、ミッちゃんだからさ。改めて俺からプロポーズとか、どう考えても変じゃ……」そう言いかけると美智子が眉間に皺を寄せて、険しい表情を浮かべているのが目に入った。四の五の言うな、という無言の圧力だ。「……えーっと、ですね」いきなりの難問に、トモローは絶句した。プロポーズって、どう言えばいいのだろう。今この瞬間までまったく考えていなかったのだ。「トモくんは、ブンガクの人でしょ。僕と結婚してくださいとか、そんな当たり前なことは言わないわよね」