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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 14/16

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概要:
朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

14美智子はチキンソテーを食べながら、何気なくハードルを上げてくる。「ちょっと待って」トモローは少し時間をもらい、腕組みして考えた。思えば、美智子との付き合いは長い。彼女は高校の一つ先輩で、クジ引きで負けて無理やりやらされた体育祭の実行委員会で一緒になったのが、知り合ったきっかけだ。どちらが先に好きになったのかはわからないが(美智子は頑なにトモローが先だと主張しているが)、いつのまにか意識し合うようになり、自然に付き合うようになった。その頃の美智子は受験生で、時間は限られていたけれど、必ず毎日顔を合わせていた。やがて二人とも大学生になり(共に一年の浪人を経ている)、それまで以上に一緒に過ごせるようになったが──それでも最後には、必ずお互いの家に帰らなくてはならなかった。家は電車で一駅分の距離で、比較的近いと言えたけれど、それでも離れなくてはならないことに変わりはない。今も時々ぼやくけれど、そのころの美智子は、それがイヤでたまらないと言っていた。とても楽しい時間を過ごしたのに、最後は別の場所に帰らなくてはならないことが辛かったのだ。もちろんトモローにも、その気持ちはわかった。やはりトモローも、同じようなことを感じていたからだ。