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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 3/16

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概要:
朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

ようやく集中してきたところで、美智子の声がした。顔を上げると、身長百七十センチ越えの美智子が自分を見下ろしている。トモローは反射的に、原稿用紙を体で隠すような動きをしてしまう。「何で隠すのよ」そう言いながら美智子は、向かいの席に大きなバッグを投げ出すように置いた。さらに小型のバズーカ砲のような図面入れを二本も肩にかけていて、かなりの重装備だ。「濃厚なベッドシーンでも書いてた?」「そんなんじゃないよ」美智子が覗き込むようにしたので、トモローは素早く原稿用紙を閉じた。別に美智子になら見られて困るものでもないが、やはり少し恥ずかしい。「あ、やっぱりエロだ。今、乳房っていう字が見えた」 「違うよ。これは殺された女性の描写で……胸にナイフが刺さってたってところを書いてるんだ」その言葉通りのシーンを書いていたのだが、なぜか言い訳しているような口調になる。もっとも他人に聞かれたら、どちらも誤解を受けてしまいそうではあるが。「ホントに男ってしょうがないわね。そういうところにばっかり、目が行くんだから」「だから、違うって言ってるじゃん」そう言いながらもトモローの視線は、久しぶりに見る美智子の胸のふくらみに注がれてい