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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 4/16

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概要:
朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

た。これは男の習性というか、本能のようなものである。「でも、やっぱりトモくんはブンガクの人なのねぇ。会社がつぶれたって時でも、そうして小説書くんだから」「いや……どうしていいかわかんないから、とりあえず今まで通りにやってるだけだよ。内心じゃ、けっこう慌ててる」「なるほどね。つまり、静かにオタオタしてるってとこか」向かいの席にどさりと腰を下ろして、美智子は言った。「とりあえず何か食べよう。人間はハラが減ってると、建設的な話ができなくなるからね」ウェイトレスを呼ぶと、美智子はチキンソテーのセット、温野菜のサラダを注文し、それとは別に白身魚のフライを注文した。さらに食後にデザートも頼むはずだから、かなりの食欲と言わねばなるまい。ハンバーグセットだけを頼んだトモローが控えめに見えるくらいだが、美智子がよく食べるのは昔からのことなので、今さら驚きもしない。それでいて体はほっそりしているのだから、摂った栄養はどこに行っているのだろうか。料理を待つ間、トモローは再び会社終了の?末を美智子に説明した。昼に電話で話したことの繰り返しになるが、とりあえず今月分の給料は出るという、後で蓼原から説明された一言を付け足した。「それで、トモくんはどうするつもり? すぐに次の仕事を探すの?」やがて運ばれてきた料理を食べながら、美智子は尋ねてくる。