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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 5/16

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

「そうだなぁ……本当なら、すぐにでも探さなくっちゃいけないんだろうけどね。できたら、ちょっとくらいノンビリしたいなぁ」正直なところ、すぐに食べるのに困るわけでもないので、できれば六月末まで、投稿する小説の執筆に集中したい……という気持ちがあった。無理なら、せめて一か月でも。そう言うと、美智子は笑ってうなずいた。「いいんじゃない? もし、その小説で当たったら、作家になれるんだし」「当たったらって、クジみたいに言わないでくれよ」「あっ、ごめん。えーっと、当選したら?」「間違いじゃないけど、まだ何かクジっぽいな」新人賞は、あくまで作品の勝負、ひいては才能の競い合いなのだから、クジ運は関係ない……と思いたい。「二年間がんばったんだから、そうするのも悪くないんじゃないかな。そしたら前みたいに締め切り前に何日も徹夜するとか、そんな無茶なこともしなくて済むでしょ」そう言ってチキンソテーにかぶりつくさまを見ながら、やっぱり美智子がカノジョでよかったな……とトモローは思った。トモローは美智子以外の女性と付き合ったことはないが、たとえば世の中に、小説家になりたいという無謀な夢を真剣に支持してくれる女性が、いったいどのくらいいるものだろうか。とにかく男は経済力、という風潮が広まっている昨今、期間限定とはいえ、働きもせず