tomorou002

NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 7/16

電子ブックを開く

このページは tomorou002 の電子ブックに掲載されている7ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

「そんなことはないけど、話が急すぎてさ」「こんな話、急にしようが、ゆっくりしようが同じでしょ」それは確かにそうだけれど、トモローは二十七歳──結婚するには、少し早いような気もする。「何言ってるのよ。私の友だちには、もう子供を二人産んでる子だっているのに……そもそも私が年上だってこと、忘れてない? トモくんがノンビリしてたら、その分、私も確実に年を食っちゃうんだからね」「そりゃあ、わかってるさ」わかっているけれど、自分が結婚の当事者になるということが実感できない。むろん、いつかはするだろうと思ってはいたけれど、それは本当に“いつか”で、少なくとも今ではなかった。「いやぁ、やっぱり、おかしいよ」少し考え込んでから、トモローは言った。「だって俺、仕事なくなっちゃったんだよ? どんな顔して結婚させてくださいって、お父さんたちに言うのさ。味噌汁で顔を洗って出直して来い……とか言われるだろ、普通は」美智子のお父さんは物静かな教養人で、そんな言葉づかいをするとは思えなかったが、あくまでも一般論である。高校時代に美智子と付き合い始めて以来、トモローは彼女の両親とも親しくしていた。一