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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 8/16

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

人娘である美智子は親に隠し事をしないタチで、付き合い始めて、すぐに家に連れて行かれたのだ。それ以来、当たり前に美智子の家に出入りするようになり、今ではお父さんの将棋に付き合ったり、お母さんと美智子との買い物に同行することも珍しくない。休みの日に夕食をごちそうになったりしていると、すでに婿入りしたような気にもなる。おそらく本当に結婚することになったら、反対されるようなことはないと思えるが、さすがに会社がなくなった直後となれば別だろう。とにかく就職して、生活の基盤を作ってからだ……と言われるのがオチではないか。トモローがそう言うと、美智子は食事をする手を止めて答えた。「実はね……これは、お父さんたちも望んでいることなのよ」「どういうこと?」「お父さんとお母さんは、私が早く結婚したらいいって思ってるの。もちろん、トモくんとね」「それはありがたいけど……だったら、新しい仕事を見つけてからの方がいいんじゃないの」「悪いけど、そんな悠長なこと、言っていられる場合じゃないのよ」美智子はフォークとナイフをテーブルに置き、真剣な表情で言った。「千葉におじいちゃんとおばあちゃんがいるって、前に教えたわよね」「うん。ミッちゃんが子供のころは東京に住んでて、よく面倒を見てくれたんでしょ」