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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 1/16

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

 繰り返しになるが、人生、一寸先は闇──しょせん予定は未定の毎日だから、どんな想定外のことが起こっても、何の不思議もない。もちろん世界は自分の思いどおりには動いてくれないものだが、時には自分の予定だの意向だのを一切無視して、半ば強制的に物事が進んでしまうこともあるのだと、トモローは今さらながら思い知った。(運命って、こういうものなのかな) 日曜の昼下がりの駅前広場で、思い思いの方向に流れていく雑踏を見ながらトモローがそう思った時、不意に背後から肩を叩かれた。ビクッと肩をひそめて振り返ると、いつもより眉毛の薄い美智子が、ニコニコ笑って立っている。「先輩、お疲れさんです」 よくわからないノリで頭を下げる美智子は、ややくたびれたトレーナーに膝の破れたジーンズ、草履のように薄っぺらいサンダルをつっかけていた。完全に油断しきった地元スタイル──おまけにノーメイクで、緊張感の欠片もない。「えっ、ミッちゃんは、その格好でいいわけ?」トモローが主夫になったワケ3