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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 10/16

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

10何かをそろえて役を作ればOKってものじゃないと思うの。お兄さんは、きっとお金や物の苦労を私にさせるなっていう意味で言ってくれてるんだと思うけど……二人だったら、きっと貧乏したって楽しいと思うんだ」 あぁ、きっとそうだ──トモローは今さらながら、美智子にハートを鷲掴みにされたような気がした。「だからトモくんも、小説家になりたいんだったら、がんばったらいいと思うの。本当に好きなことは、最後のオアシスみたいなものだから、仕事にするなって言う人もいるけどね……私は違うと思う。やっぱり好きなことだからがんばれるし、苦労を苦労と思わなくなるんじゃないかな。私だって好きじゃなきゃ、今の仕事なんか続けてないよ」 一流のインテリアデザイナーを目指す美智子は、会社で下っ端の身分とはいえ、かなり厳しい生活を送っている。それこそ三時間しか寝られないような状況が、何日も続くことも珍しくないのだ。「だから、私も好きな仕事を力いっぱいやる。専業主婦に収まりたいなんて、一度も思ったことがないよ。こんな私だから……トモくんと一緒にいるのが、一番いいんだ」 そう言いながら美智子は細いネクタイを掴んで、トモローの顔をぐいっと引き寄せた。「私の旦那になるんだったら、しっかりせい」 ついでにホッペに軽くキスされて、トモローはいやがうえにも盛り上がる。「よしっ、この際、当たって砕けろだ」