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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 11/16

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

11 鼻息の荒くなったトモローは、玄関先についた呼び鈴を力強く押した。ピンポーン、という音が響いたかと思うと、隣にいた美智子が「はーい」と答える。「あ、言っとくけど、当たっても砕けるようなことはないよ。トモくんの会社のこととか、結婚することとか、私が全部話してあるから」「えっ、そうなの?」 思わず口走った時、玄関の扉が開いて、美智子のお母さんが顔を出した。ぽっちゃりして、普段から笑顔が地顔になっているような人だが、今日はいつも以上に満面の笑みをたたえ、喜びが溢れ出ているようだった。「トモローくん、いらっしゃい! 会社つぶれたんですって? 大変だったわねぇ」 いきなりの応酬に、思わず絶句してしまう。「でも、そのおかげで、ミッちゃんと結婚する気になったんだって? おめでたいわぁ」「えっ、そういうわけじゃ……」 つい反論しようとしたが、美智子にポンと背中を叩かれて、その言葉を飲み込んだ。もうハードルが高いんだか低いんだか、そもそも、あるんだかないんだか。「さぁ、あがってあがって」 まったくいつもと変わらない様子で中に通されると、居間で美智子のお父さんが将棋盤に向かっていた。「おっ、来たか、トモローくん。どうだい、さっそく一局」