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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 12/16

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

12「お父さん、そういうことは後にしてよ。トモくん、今日は大事な用事で来たんだから」「あぁ、そういえば、そうだったな」 お父さんは将棋盤を脇に押しやると、すっと立ち上がってソファーに体を移した。 美智子が長身なのは、この人の遺伝だとすぐにわかるくらい背が高く、?せぎすで手足が長い人だ。日本人っぽくない鷲鼻に広い額は、トモローが子供の頃に読んだ本の挿絵に書かれていたシャーロック・ホームズそのものである。大手家電メーカーで開発設計の仕事をしていたそうだが、今は偉くなってしまい、現場からは遠ざかっている。「そうそう、トモローくん、会社がつぶれたんだってね。ビックリしただろ」 特に気に留めていないような口調で、お父さんは言った。「まぁ、キミもまだ若いんだから、どうにでもなるさ。だいたい世の中はな、一人じゃ食べられなくてても、二人なら、どうにかなるもんだよ」 どうやら美智子の呑気な発言は、お父さんのお仕込みらしい。トモローは頭を?きながら、「はぁ」と言う他なかった。「ちょっと待ってよ、お父さんもお母さんも……何でも先回りしちゃったら、トモくんが何も言えなくなっちゃうでしょう」 美智子が言うと、お父さんとお母さんは初めて気づいたように顔を見合わせた。お父さんに至っては、両手をポンと打ち合わせ、「いっけね」と頭を?く。「そういえば、そうだ……やっぱり、『お嬢さんを僕にください』ってやつ、やってもらわ