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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 13/16

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概要:
朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

13ないとな。よし、トモローくん、どんと来い」 お父さんは前のめりになって、ホームズ激似の顔を近づけてトモローの言葉を待った。「あの……その、ですね」 トモローは頭の中が真っ白になるのを感じながら、かろうじて残ったわずかな部分で考えた──これって、何の罰ゲームなんだ。「美智子さんを……お嬢さんを、僕にくださいっ」 ようやく、それだけ叫ぶと、お父さんはさらりと答えた。「いやいや、あげるのはムリ。うちの娘は物じゃないから」「えっ」 突拍子もない展開だが、実はある程度は予測できていた事態とも言える。美智子のお父さんは、見かけこそ知的でダンディーだが──その実、かなり風変わりな人だからである。「昔からね、それって変な言い方だなって思ってたんだよね。人間をあげたりもらったりするなんて、法律で禁止されてるだろう」「また、わけわかんないこと言って」 ベテランの夫婦漫才のような絶妙なタイミングで、お母さんがツッコミを入れた。「今、そんなこと言い出したら、トモローくんが困るでしょう」「いやいや、その辺のことは、ちゃんとしておかないと」 お父さんは腕組みしながら、眉をひそめた。