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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 3/16

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

 トモローのアパートと美智子の家は、一駅しか離れていない。それぞれの駅から若干距離があるので、両者間の移動は自転車を使うのが一番便利なのだが、ズボンに不用意な皺が入るのが嫌だったのと、やはり特別な日だから……と電車を使ったのだ。 そういうトモローの気遣いに、美智子はまったく関心を持っていないようだった。昔から彼女は、ムダに豪快なところがある。(何だか調子が狂うなぁ) 一緒に歩き出しながら、トモローは思った。 会社が突然の解散を宣言してから三週間が過ぎていたが──トモローの生活は、大きく変化していた。 一週間ほどは後始末に追われていたが、最後に居酒屋で“解散式”を挙行したのを最後に、『美術オリオン』は完全に消滅した。当然大荒れの最終日だったが、とりあえずの決着はついたのだ。 そのあくる日からトモローは晴れて無職状態に突入したものの、けしてヒマにはならなかった。投稿する小説に集中できるようになったのはうれしかったが、突然に決まった結婚の準備も、始めなければならなかったからである。 結婚に際しては、何をおいても親の承諾を得るのが大前提だが、トモローの親はすでに二人とも他界しているので、掛け合うのは美智子の両親だけでいい。だが、完全無職となった今では、そのハードルがやたらと高く感じる。