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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 6/16

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

手なゲップをぶっ放した後、真顔で付け足した。「おまえもおまえだよ。結婚するって、どういうことかわかってんのか? その女の人生を任されるってことなんだぞ。そんなことでおまえ、美智子ちゃんを幸せにできるのかよ」 ご説、ごもっともです──トモローは、うなだれるしかなかった。「おまえもな、いい年して小説家になりたいとか、いつまでも子供みたいなこと言ってるんじゃねぇぞ。そんなの、なれるわけねぇだろ。おまえは昔から、博才ないだろうが」「いや、博ばく打ちじゃないから」「博打みたいなもんだ、そんなもんは」 トモローのささやかな反論を蹴り倒し、ゴローは新しいビールを注文して言った。「大学出のおまえから見たら、古臭く聞こえるかもしれないけどな……やっぱり世の中は、男が外に出て稼ぐ、女が家にいてメシを作るっていうのが、一番うまく行くんだよ。女房を働かせるってのは、男の恥だぞ」 元ヤンキーだからというわけではないだろうが、兄貴の頭は昔から古かった。何かにつけてプライドだのメンツだのを持ち出すので、そういうものにあまり魅力を感じないトモローは、兄と話していると、息が詰まるような気分になることがよくあった。 けれど、いざ結婚するという話になってみると──兄貴の言うことが、いちいち正しいような気がしてしょうがない。「もちろん、俺は反対しねぇよ。どのみち身内に反対されたって結婚するんだ……ってくら